就労支援者として働き始めて1年になります。これからスキルアップしていきたいんですれど、どんなスキルが必要でしょうか?
就労支援者は実は意外とマルチな能力が求められます。自分に何が足りていないかチェックしていきましょう。
就労支援者には面談スキル以外にも色々な能力が求められます。「人の相談を聞く」部分ばかりがフォーカスされがちですが、それに付随する業務が多岐に渡ります。
私自身、10年ほどのキャリアを積んでいますが、まだまだ足りないところばかりだと痛感しています。
そこで今回は、就労支援者の必須スキル、できれば身に着けておきたいスキルに区分して、必要な能力をまとめてみました。スキルアップを考えている就労支援者はぜひ最後までご覧ください!
この記事を見れば知ることができること
- 就労支援者が必ず身に着けておきたいスキル
- 就労支援者ならできれば身に着けておきたいスキル
- スキルを身に着けるための方法
それでは一つずつ見ていきましょう。
目次
就労支援者が必ず身に着けておきたいスキル

まずは就労支援者にとっての必須スキルから見ていきましょう。2つ紹介しますが、どちらも不十分だとどっかで詰んだり、クレームにつながりかねないものと思ってください。
おどすわけではありませんが、それだけ大事なスキルなので整理していきましょう。
必須スキル① 傾聴力
まず1つ目の就労支援者の必須スキルは傾聴力です。
「傾聴」という言葉は就労支援者で知らない人はいないかと思います。念のため、意味をおさらいしておきます。
傾聴とは相手の話したいことに対して深く丁寧に耳を傾け、相手に肯定的な関心を寄せ内容の真意をはっきりとさせながら、共感的理解を示すコミュニケーションの技法です。
ただ話を聞いたり自分の関心のあることだけを質問したりするのではなく、相手が話したいことや伝えたいことを真摯に受け止め、共感的な態度で理解に務める聞き方を目指します。
傾聴により、話し手は自分だけではわからなかった自分自身について深く理解することができ、どのような行動をとるべきか気付くきっかけを与えることが期待できます。
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つまり、傾聴とは相手に共感する姿勢を示しながら話に耳を傾ける行為を指します。
ちなみに皆さんは自分が傾聴をしっかり出来ていると感じているでしょうか?
え?利用者さんの話はちゃんと聞くようにしているので、さすがに最低限はできている気がしますが…
実際に出来ているかはしっかり振り返っておいたほうが良いです。実は傾聴ってとても難しいんです。
傾聴の何が難しいかと言うと、できているかどうかの判断が困難だからに尽きます。基本的に面談はクローズドな環境下で行われるため、出来不出来に関してのフィードバックがされにくいんです。
良くも悪くも利用者さんの反応からしかうかがえないため、「目立ったトラブルがなければできている」と錯覚しがちなんです。実際、「人の話を聞く」という行為自体は特別なスキルは必要ありませんからね。
しかし、傾聴を軽視して業務を行うと、支援者のエゴを押し付けていると誤解を生んだり、話を聞いているはずなのに「自分の意見を聞いてもらえなかった」というクレームになりかねません。
傾聴のコツとして、いかに利用者が現実離れをした意見を言ったり、支援者の意図と異なる受け答えをしても、まずは一つの意見として受け止めることが挙げられます。
「おつらかったんですね」、「とてもよくわかりますよ」など、共感の合図をした後に、今後どのようにしていきたいかを確認したり、利用者に選択肢を与えることが重要です。
傾聴スキルを磨くためには、先輩職員の面談に同席したり、職員同士の研修実施が効果的です。とにかく場慣れが必要なので、実戦形式のスーパービジョンをオススメします。
本来、傾聴というテーマだけで記事を何本も書けるほど深い題材です。
まだまだ書き足りないところではありますが、就労支援者である以上、傾聴は避けては通れないものであり、思っている以上に難しいものであることは忘れないでください。
はずかしながら、私も5年以上キャリアを積んだ後に、上司から傾聴のやり方を再度見直されたことがあります。初心忘るべからずですね。
傾聴スキルの身に着け方:事業所内でのスーパービジョンを通して実践を行う
必須スキル② 事務処理能力
2つ目の就労支援者の必須スキルは事務処理能力です。
経験者の方はお分かりの通り、就労支援者は面談業務だけしていれば良いわけではありません。
記録の作成、行事の運営・企画書作成など、事務業務も数多くあります。事業所のサービス体系にもよりますが、事務業務の時間の方が多いことだってあります。
それでも一般企業よりは事務処理の難易度が特別高いわけではありませんし、量もめちゃくちゃに多いというほどではありません。
ではなぜ事務処理能力が必須スキルなのでしょうか?
理由は簡単で、事務処理能力が足りないければ足りないほど、支援の精度が落ちてくるからです。
え?でも支援業務と事務処理って別物では?
とんでもない!事務に手を取られていると支援業務にもめちゃくちゃ影響出ますよ!
事務処理に手を取られるということは、他の業務にも時間的・精神的にも制限が出てきます。
たとえば、利用者の記録を何とかまとめ終わった後、頭を切り替える間も無く、別の利用者の面接にすぐに入る場面を想像してみてください。
事前にその方の記録を確認する時間を持てていないため、面談時に確認すべき事項が漏れてしまうといったリスクが生まれます。
結局、また別のタイミングで聞き直しをしたりと、自分で仕事を増やすことにつながります。そしてまた事務処理にバタついて、支援業務を圧迫するという悪循環が生まれます。
上記のケアレスミスがあると周りからは「おっちょこちょい」と勘違いされがちですが、根本的な原因は、事務業務の優先順位付けができていないからです。
「自分はそういう仕事のスタイルだから…」とは思わず、業務間にインターバルを置けるように、事務処理業務を進めることが重要です。
厳しい言い方ですが、あなたがそれで良くても、周りの利用者に間接的に飛び火する可能性がある以上、事務処理スキルを伸ばす必要があります。
事務処理を円滑に進める方法としては、以下のような方法があります。参考にしてみてください。
事務処理スキルの伸ばし方
- 緊急の業務を除き、簡単に完了する業務(電話取次程度の簡易的な記録作成など)を優先的に終わらせる→業務の量が少なくなり、優先順位をつけやすくなる
- 明らかに一人では遂行しきれない業務は、早い段階で協力を申し出る→業務の抱え込み防止になる
- 記録作成の際に、要約体や逐語体など、記録の作成形式を必要に応じて変える→記録の明瞭化且つ時間短縮につながる
就労支援者ができれば身に着けておきたいスキル

それでは、就労支援者が身に着けておきたいスキルを紹介していきます。ここで紹介するのは、無くても業務に致命的な支障はでないものの、仕事の幅を広げるなら意識しておきたいスキルになります。
あると良いスキル① 情報収集能力
まず1つ目の就労者にあると良いスキルは情報収集能力です。
障害者就労支援のみならず、福祉の仕事はとどのつまり、国の法律のルールに沿って行うものです。つまり、国の情勢…もっと言えば厚労省の動向(検討会議)にはアンテナを張っておく必要があります。
でも業務に影響するのであれば、上司が教えてくれるんじゃないですか?
もちろん大半の事業所はそうでしょう。ただ、自分でもアンテナを張っておくメリットはたくさんありますよ♪
国の動向にアンテナを…とは言っても、日常の業務で手一杯の人がほとんどかと思います。胸張って「報酬改定の時期は厚労省のサイト張り付いてます!」なんて人の方が少数派でしょう。
ただ、最近は厚労省もわかりやすくPDF資料でイラストや図を用いた資料をWEBに掲載しています。要点を把握するのに何十分もかかるものではありません。
というか、自分の仕事のルールの枠組み自体が変わるって、普通に考えたら結構な大ごとです。特に障害者就労に関しては、大がかりなサービス変更が行われることが多いです。
上司から聞いてから頭に入れるのと、自分なりに咀嚼した後に説明を聞くのでは、理解の度合いに雲泥の差があることは容易にわかると思います。
せめて報酬改定前年度に関しては、たまにで良いのでHPに目を通す習慣をつけておきたいところです。
とまぁ色々と書きましたが、情報収集を日ごろからする癖をつけておくと、新しい知識を頭に入れるコツが無意識につくのでメリットは大きいですよ。
情報収集力の身に着け方:定期的に厚労省のサイトなどを通じて制度の理解を深める
資格試験チャレンジもオススメ
情報収集をする際に、スムーズに知識を頭に入れるようになりたいのであれば、社会福祉士や精神保健福祉士の資格取得もオススメです。
というのは社会福祉士などの資格試験は、実際の支援においての技法から各種法令に関しての知識に至るまで、横断的に問われます。
つまり、資格試験の勉強を通して、制度の理解を頭に入れやすくする下地をつくることができます。建物を建てる時の基礎工事に近いとでもいえば良いでしょうか。
制度が変わるとその度に知識をアップデートする必要がありますが、根幹となる教養は一生ものになります。資格試験の勉強と新しい知識を頭に入れる行為はリンクしている部分もあるため、やっといて損はありません。
結局のところ、就労支援者は支援者である以上、ずっと勉強がつきまといます。まだ考えたことがないという方は、これを機に受験を考えてみるのもオススメです。
参考:精神保健福祉士になるのはやめたほうがいい?会社員からPSWになって良かったと思える3つの事実
あると良いスキル② プレゼンテーション力
2つ目の就労支援者にあると良いスキルはプレゼンテーション力です。
「福祉なのにプレゼンテーション?」と思われる人は多いかもしれません。実際、福祉関係者でプレゼンテーションが得意という人はあまり多くはないです。
とはいうものの、就労支援者は各種ネットワーク会議などで対外的な場に出ることが実は多かったりします。そういった場において、事例紹介や意見の発表などを先陣切って出来ると業務上、メリットが大きいです。
たとえば、顔を覚えてもらうことでネットワーク構築がはかどり、利用者を関係機関にコーディネートする際に話を円滑に運びやすくなります。
対外的な場でのプレゼン自体が業務上でも評価してもらえれば、キャリアアップや自分の自身にもつながります。
プレゼンテーション力の身に着け方は一概には言えませんが、意見を要約する力が必要条件の一つと言えるでしょう。大体、人の話って自分が思っているよりも冗長的で長くなりがちです。
何も故スティーブ・ジョブズばりにうまく話せというわけじゃありません。複数の情報を相手にわかりやすく伝えるというのがプレゼンテーションです。
たとえば事業所内での朝礼や夕礼の場で、要点を簡潔にまとめるように心がけるなど、日ごろからの努力が不可欠です。
プレゼンテーション力の身に着け方:日ごろの日常業務の時から、意見の要約を意識してみる
まとめ
- 就労支援者なら傾聴力・事務処理能力は必ず身に着けておきたい
- 情報収集力とプレゼンテーション力を身に着けておくことで仕事の幅が広がったり、やりやすくなる
- 特別なことをしなくても、日常の業務で能力を伸ばす機会は転がっている
いかがでしたでしょうか?
就労支援者は面談スキル以外にも広範囲の能力が求められることがわかったかと思います。とはいっても、よほどじゃなければ特別な才能を必要とするものではありません。
できるころからチャレンジして、支援の質を高めていきましょう!