障害者雇用は障害者雇用促進法に基づいているのは知っているんですが、どうにも自分で調べきれなくて…
障害者雇用促進法は障害者雇用の必須知識や社会資源が詰め込まれています。企業担当者はぜひ知っておきたいところです!
障害者雇用促進法は、障害者の職業安定を目的として規定されている法律です。障害者を雇用・職場定着するためのルールや社会資源が示されています。
企業担当者であれば、すべて知っておきたい知識です!現役支援員である筆者が必須ポイントを絞って紹介していきます。今回の記事を見れば、障害者採用における基礎知識を身に着けることができます!
最後までご覧ください!
この記事を見れば知ることができること
- 障害者雇用促進法の目的・概要
- 障害者雇用における支援機関
- 企業が障害者を雇用する上での制度上のルール
それでは一つずつ見ていきましょう!
目次
障害者雇用促進法とは

障害者雇用促進法は、障害者の職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、もつて障害者の職業の安定を図ることが目的とされています。
一言で言えば、障害者が職場定着するためのルールが規定されている法律です。
まずは、大枠での法律主旨や対象となる範囲を解説していきます。
障害者の範囲
障害者雇用促進法の”障害者”の範囲ってどこからどこまでを指すんですか?障害者手帳を持っていれば障害者?
良い質問ですね!障害者の定義は障害者手帳の有無ではありません!
障害者雇用促進法において、障害者は以下のように規定されています。
身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な者
心身の機能障害があり、社会生活に制限があれば障害者であると示されています。障害者手帳の有無は言及されていないことがわかるかと思います。
障害者雇用促進法の制定当初は、発達障害者が含まれていませんでしたが、平成25年6月の改正で障害者の範囲に含まれるようになりました。
時代に合わせて障害者雇用促進法も改正が繰り返されています。
法定雇用率の算定
でも障害者を雇用していると扱われるのは手帳保持者だけと聞いたことがあります。
そうなんです。障害者を雇用しているとみなされるには、障害者手帳の保持が条件になります。
障害者雇用促進法では、50人以上の規模の民間企業では、障害者を2.3%(令和4年2月時点)雇わなければいけないと規定されています。
障害者を雇用しなければいけない割合のことを法定雇用率と言います。

法定雇用率に算定されるうえで以下の条件が必要となります。
- 身体障害者、知的障害者、精神障害者が対象
- 障害者手帳を取得していること
発達障害者や難病者であっても、障害者手帳を保持していれば法定雇用率に算定されます。しかし、知的障害や精神障害があっても、手帳を取得するレベルでなければ、障害者の法定雇用率対象外となります。
つまり、障害者雇用枠での就職が難しくなるということになります。
障害者雇用促進法において、障害者の定義には手帳の有無は規定されていませんが、法定雇用率の算定には、手帳が必要となります。
矛盾しているように感じられるかもしれませんが、障害者手帳が一定の線引きとされているのが現状としてあります。
手帳を取得できるレベルにない障害者は、制度のはざまで苦しんでいるという状態があり、社会的な課題とされています。
合理的配慮の提供義務
障害者雇用促進法の法定雇用率には手帳保持者が条件づけられています。
かといって、手帳を取得していない障害者は配慮しなくてよいということではありません。企業は障害者に対して、合理的配慮の提供義務があります。
配慮と一口に言っても色々あります。通院をしやすくするように休みを取りやすくしたり等、障害に合わせた配慮が求められます。
”合理的”配慮なので、企業にキャパシティを大幅に超える配慮は提供できません。下肢障害がある方に対して、社屋を1階に移すように配慮するといっても、物理的に難しい側面が出てきます。
合理的配慮に関しては、以下の記事でも取り上げています。企業の採用担当の方はぜひ一度目を通してみてください。
→障害者雇用で合理的配慮を得る方法教えます【知らないと危ないです】
職業リハビリテーションの推進

続いて、障害者雇用促進法における職業リハビリテーションの推進を紹介します。職業リハビリテーションとは、障害者の社会参加の機会を生み出していく取り組みを意味します。
平たく言えば、職業リハビリテーションは、障害者雇用の推進をしている支援機関のことを指します。
障害当事者以外に企業側も雇用相談で活用できるサービスになります。心強い味方として、いずれの支援機関も知っておくと良いでしょう。
ハローワーク
1つ目の障害者雇用促進法における職業リハビリテーション推進機関はハローワークです。
え?ハローワーク?と思う方もいるかもしれませんね。
企業が利用するイメージは薄いかもしれませんが、ハローワークは企業が障害者雇用する上では外せない機関です。ハローワークを利用すると障害者雇用の技術的助言・指導、求人掲載などが受けられます。
特に奨励金付きで障害者を3か月間試用雇用できるトライアル雇用制度や、採用コストを大幅に下げられる特定求職者雇用開発助成金(特開金)はハローワークを通さないと利用できません。
これから障害者を雇用していきたいという場合には、ぜひ活用したい機関です。
参考記事をのっけておくので、知識を深めたい方は要チェック!
→【企業向け】特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)をわかりやすく解説!【人事必見】
→【企業向け】トライアル雇用助成金はいくらもらえるかが3分でわかります【申請方法・コロナ特例も解説】
障害者職業センター
2つ目の障害者雇用促進法における職業リハビリテーション推進機関は障害者職業センターです。
障害者職業センターは、全国に1か所しかない障碍者職業総合センター、全国に2か所ある広域障害者職業センター、各都道府県に設置された地域障害者職業センターの3つからなります。
通常、職業センターというと地域障害者職業センターを指します。
職業センターは障害者に対する職業評価や各種訓練を行っています。それ以外にも休職者向けのリワーク支援や、職場定着のためのジョブコーチ支援を通して、企業の職場環境改善支援も行っています。
すでに障害者は雇用しているが、さらに職場定着率を高めたい!という企業にはオススメです。
参考記事:【保存版】障害者職業センターとはどんなところか丸わかり!手帳が無くても無料で利用できます!
障害者就業・生活支援センター
3つ目の障害者雇用促進法における職業リハビリテーション推進機関は障害者就業・生活支援センターです。
障害者就業・生活支援センターは、組織名の間に中点があることから転じて、ナカポツセンターと呼ばれています。
障害者への各種職業相談に乗るだけでなく、企業・福祉サービスの垣根を越えて、地域の連携拠点として、一体的な相談に乗っています。
ナカポツセンターは企業からの雇用相談にも乗っており、地域の支援機関を通じて、実習の手配を行ったり、採用者・企業へのアフターフォローを行っています。
地域に根付いた採用活動を行いたいという企業は、関係を持っておいて損はありません。
ちなみにエドガワが所属しているのが、このナカポツセンターになります。
参考記事:障害者就業・生活支援センターとは障害者雇用の何でも屋!働くを楽にするためのサービス内容を総まとめ!
注意すべき制度

続いて、障害者雇用促進法における給付金や企業名公表などの制度を紹介していきます。通常の採用とは異なり、障害者雇用独特のルールが規定されています。
採用に携わる方なら、常識と言っても良い知識に当たるため、必ずチェックしておきましょう!
障害者雇用納付金
1つ目の障害者雇用促進法における注意すべき制度は障害者雇用納付金制度です。
障害者雇用納付金は、常用労働者数101人以上の法定雇用率未達成企業から、未達成となる人数1人につき5万円を徴収する制度になります。
逆に法定雇用率を達成する企業に対しては、超過分1人につき、障害者雇用調整金もしくは報奨金が支払われます。
以下の表で金額を確認しておきましょう。
対象 | 金額 | |
障害者雇用納付金 | 雇用率未達成 労働者101人以上 | 1人につき5万円徴収/月 |
障害者雇用調整金 | 雇用率達成 労働者101人以上 | 1人につき2.7万円支給/月 |
報奨金 | 雇用率達成 労働者100人以下 | 1人につき2.1万円支給/月 |
状況報告
2つ目の障害者雇用促進法における注意すべき制度は、状況報告制度です。常用労働者が45.5人以上の企業は、毎年障害者をどれくらい雇用しているかをハローワークに報告する義務があります。
6月1日に報告することから転じて、ロクイチ調査とも呼ばれています。
数々の企業がロクイチ調査に間に合うように採用計画を立てています。
障害者の雇い入れに関する計画
3つ目の障害者雇用促進法における注意すべき制度は、障害者の雇い入れ計画です。
すべての企業が対象となるわけではなく、障害者の雇用促進が必要な企業のみが対象となります。
厚生労働大臣の名のもとに、事業主に対して、障害者の雇い入れに関する計画作成を命じる制度です。
法定雇用率が大幅に未達の企業が対象の場合がほとんどなので、雇い入れ計画を命じられた時点でイエローカードと言っても良いでしょう。
企業名公表
4つ目の障害者雇用促進法における注意すべき制度は企業名公表です。
雇い入れ計画の実施勧告に従わず、雇用状況が改善されない場合は、企業名を公表することができる制度です。
企業名が全国に公表されるというのは、企業のイメージ悪化に直結します。障害者に理解がないというイメージは、障害者雇用以外の面でも印象の悪化につながります。
雇い入れ計画の作成がイエローカードとすると、企業名公表がレッドカードと言えるでしょうか。
そもそも雇い入れ計画を作らなければいけない状況にならないよう、採用は計画的に進めていきたいところです。
特例子会社
最後の障害者雇用促進法における注意すべき制度は特例子会社制度です。
特例子会社制度とは、子会社を親会社の一部門とみなして、親会社の法定雇用率に合算できる制度です。関連会社も含めて、雇用率の算定にできるグループ特例の制度もあります。
すべてひっくるめて特例子会社制度と呼びます。
特例子会社のパターンとして王道なのが、障害者を一か所に集めて一つの子会社化し、親会社の業務を請け負う形で会社運営を行うケースです。
良く言えば、障害者の配慮がかないやすくなります。悪く言えば、安易に特例子会社を作ることで、親会社との主従関係が生まれ、親会社の意向に振り回されがちになる会社が見受けられます。
特例子会社設立を考えている企業は多いと思うので、しっかりとメリット・デメリットは把握しておきたいところです。
参考記事:特例子会社のメリット・デメリットを忖度なしで教えます【現役支援員が解説】
企業内での支援体制

最後に、障害者雇用促進法における企業内での支援体制について紹介してきます。
障害者雇用促進法には、障害者雇用を行う企業における支援体制整備についてのルールが明記されています。
盲点になりがちな部分なのでチェックしておきましょう。
障害者雇用推進者
1つ目の障害者雇用促進法における支援体制は、障害者雇用推進者です。
常用労働者が45.5人以上の企業…つまり障害者雇用義務が生じる企業は、障害者の職場環境の整備に努める障害者雇用推進者を選任するように努めなければなりません。
義務ではなく”努力義務”であることがポイントです。
障害者職業生活相談員
2つ目の障害者雇用促進法における支援体制は、障害者職業生活相談員の存在です。
障害者職業生活相談員とは、5人以上の障害者を雇用する企業は必ず選任してハローワークに届け出なければなりません。
業務内容としては、障害者の職業生活に関する相談及び指導となります。
障害者雇用推進者と異なり、障害者職業生活相談員は専任の義務があることがポイントになります。
まとめ
- 障害者雇用促進法とは、障害者の自立した職業生活を叶えるための制度・社会資源について記された法律である
- 雇用推進の機関としては、ハローワーク、障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどが挙げられる
- 法定雇用率未達成企業は、雇用納付金や企業名公表といった制度の対象となる
- 障害者雇用義務のある企業は、障害者雇用推進者の選任努力義務、障害者職業生活相談員の選任義務がある
いかがでしたでしょうか?
法律となると、どうしても苦手意識を覚える人も多いと思います。ただ、どれも障害者雇用をするなら、必須となる知識となります。
まずは一部分だけでも良いので、ポイントに絞って理解しておくことが大事です。今回の記事を参考に理解を深めていっていただければ幸いです。