精神保健福祉士の仕事に興味があるんだ。でもネットで「病むからやめとけ」と書かれていてちょっと怖くなったよ…目指すべきなのかな…
半分本当で半分嘘というのが正直なところです。病みやすい側面はありますが、精神保健福祉士=みんな病んでしまうということではないですよ!
精神保健福祉士で検索すると、「病む」というネガティブな検索候補が引っ掛かったことはないでしょうか?
今回の記事では、障害者の就労支援という立場で精神保健福祉士業務を行っている筆者が、精神保健福祉士が本当に病んでしまうのかについて、実態と対処法を解説しました。
精神保健福祉士に興味があるけれど、少し躊躇してしまっている方は最後までご覧ください。
この記事を見れば知ることができること
- 精神保健福祉士が病みやすい理由
- もし病みそうになってしまった時の対処法
- どうしても我慢できなくなった時の考え方
それでは、一つずつ見ていきましょう。
目次
精神保健福祉士だから病むのではない

まず第一にお伝えしたいのが、精神保健福祉士だから病むのではないということです。
ただし、病みやすい環境に置かれがちというのは事実です。
え??精神保健福祉士だから病むわけじゃないけど病みやすいってどういうこと??
正確には、精神保健福祉士の資格保有者が志望するような対人援助業務はストレスを抱えやすいという意味です。
精神保健福祉士自体は名称独占の資格であり、資格保有者全員が同じ業務をするわけではありません。

40%以上が病院・診療所勤務ですが、私のように地域の就労支援機関に属していたり、企業の障害者雇用担当者がスキルアップのために資格を取得するケースもあります。
また、精神保健福祉士を取得したからといって業務内容が抜本的に変わるわけではなく、資格を持っていない人が精神保健福祉士業務を行うこともあります。
参考記事:精神保健福祉士は役に立たないと言われる理由、取って良かった理由を紹介【現役PSW解説】
したがって、精神保健福祉士の資格を取得して働くことと病みやすくなることに因果関係はありません。
どんなフィールドで働くか、どういった傾向の人と接するかによって、病みやすくなるかどうかが変わるということになります。資格は関係なく、職場がそもそもギスギスしていたら病むといったことも考えられますしね。
ただ、そういったケースは抜きにしても、精神保健福祉士業務をしている人が病んでしまうといったケースはよく耳にすることです。
理由は一つで、精神保健福祉士の資格保有者が従事する対人援助職はストレスをためやすいからです。
次のセクションでは、なぜ対人援助職が病みやすくなるかについて解説していきます。
精神保健福祉士が病みやすい理由

それでは、精神保健福祉士が病みやすい理由を紹介していきます。先ほど述べた通り、就職先の違いこそあれ、精神保健福祉士は対人援助職に従事することが多い傾向にあります。
精神保健福祉士だけでなく、対人援助職にも共通することとしてお読みください。
①ゴールが見えないから
1つ目の精神保健福祉士が病みやすいとされる理由に、ゴールが見えないからという点が挙げられます。
対人援助の仕事には明確なゴールがありません。
一般的な仕事は納期があって、AとBの仕事をこなせば、終了の目途が見える…といった具合にゴールが見えやすいです。ひととき辛い業務があっても、「いつか終わる」という展望で何とか乗り切れるといった方も多いのではないでしょうか。
対して、精神保健福祉士の業務は対人援助がゆえに終わりが見えにくいです。
例えば、私が行っている就労支援で言えば、就職を目指しているけれど、障害や生活上の課題ゆえに、いつまで経っても就職できないという方も存在します。
もちろんそれを何とかするのが役割ではあるのですが、障害特性ゆえに支援者や本人がいくら頑張っても解決できないということは珍しくありません。
また、課題が多い方ほど解決の糸口が見えづらく、ケースとしても長期化がしやすくなります。
本人が疲弊するに従い、支援者側も疲弊してしまい、ストレスを抱える(≒病む)といった結果につながりやすくなります。
②労力に対して報われないから
2つ目の精神保健福祉士が病みやすい理由は、労力に対して報われないからです。
先ほど述べた通り、対人援助の仕事は困難なケースであればあるほど、多大な労力が必要になります。ただ、かけた労力に対して、一定のリターンがあるわけではないことも対人援助職のつらいところです。
一例として、認知のゆがみがある方の場合、認知行動療法を行っても、物事のとらえ方が社会生活を送るうえで支障が無くなるかどうかは確証がされません。
どんなに寄り添って、何回も面談をしたとしても、「〇〇さんのせいでうまくいかなかった」など、捨て台詞を吐かれてそのまま関係が途切れるなんてことは一度や二度じゃありません。
もちろん本人自身も辛いわけですが、福祉に熱い想いを抱いている人ほど、病むやすくなるかもしれません。
一方で、予想以上の成長を見せて、成功するケースもあります。
本人自身の頑張りによるパターンが多いのですが、「〇〇さんのおかげでうまくいった」と言ってもらえるのは、精神保健福祉士にとっては大きなモチベーションになります。
見返りを求めず、支援という仕事に愛着を持てるかどうかがキーポイントですね。
③悩みをシェアしにくいから

3つ目の精神保健福祉士が病みやすい理由は、悩みをシェアしにくいからです。
精神保健福祉士をはじめとして対人援助職を行っている方は、基本的に受け持ちのケースが割り振られ、個別での対応となることが多い傾向にあります。
高齢者福祉におけるケアマネージャーをイメージしてもらえるとわかりやすいでしょうか。
もちろん事業所内の朝礼などを通して、ケースの共有は行いますが、対応は一対一がほとんどです。
そのため、ケースで抱えた悩みの温度感を他の職員とシェアすることが難しくなりがちです。事業所がバタバタしていたりすると、ケースの共有自体もできていないパターンもあります。
そうなると、どんどん一人の職員が悩みをため込みがちになってしまい、病みやすくなるリスクも増加していきます。
ケースって細かに情報を把握しないと本人の支援に当たれないので、ケースのシェアもしっかり場を設けて行う必要があるんですよね。
事業所の中で定期的にケースの共有を行う文化が根付いていないと、働く精神保健福祉士にとっては辛くなりがちです。
精神保健福祉士が病まないための対処法

それでは次に、精神保健福祉士が病まないための対処法を紹介していきます。
どうすれば病まないのかな…プライベートの時間に思いっきり遊ぶとか?
それも一つですが、持論として仕事の悩みは仕事でしか解決できないと感じています。
精神保健福祉士の仕事は対象者と顔を合わせて行う仕事のため、プライベートを充実させても、業務内で対処法が生まれなければメンタルがジリ貧になってきます。
いかに業務内で病まない対応策を講じているかが職員の定着には重要です。
今回は、私自身や私の事業所が実際に取り組んでいる対処法を紹介していきます。ぜひ参考にしてみてください。
①複数人でケースを担当する
1つ目の精神保健福祉士が病まないための対処法は、複数人でケースを担当することです。事業所内での協力と了解が必要となる手段になりますが、有効な選択肢と言えます。
困難となりそうなケースに関しては、支援初期の段階でもう1名の担当者をつけて、2名体制で支援に臨む方法となります。
実は支援者以外に障害者側にとってもメリットがあります。
複数人で支援を担当するメリット
<障害者側>
- 支援者1名では得られない多角的な選択肢を提供してもらえる
- 一方の支援者に苦手意識を持った場合、もう一方の支援者に相談に乗ってもらえる
<支援者側>
- 一対一の対応ではなくなるため、言った言わないのトラブルを防げる
- 支援の方向性をもう一名の支援者と共有・相談できる
このようにお互いの負担感hを減らすことができるため、結果的に病みづらくなります。難点としては、マンパワーが取られてしまうため、すべての事業所やケースに対して取り入れることは難しいという点になるでしょう。
特定のケースに限って適用するなど、事業所内で検討するのをします。オススメします。
②できるできないの線引きをしておく
2つ目の精神保健福祉士が病まないための対処法はできるできないの線引きをしておくことです。
特に福祉への想いが強い人は要注意なのですが、対象者を何とか”救ってあげたい”という志向の方ほど、障害者側の要望に対して、何とかしようとしすぎてしまいます。
障害者側も、自分を救ってくれる存在として支援者を見てしまっている場合、依存しがちになってしまいます。
最初のうちは良いかもしれませんが、ケースが長期化してくると、当然一つの支援機関で自己完結できる範疇を超えてくることがほとんどです。
たとえば、私のような就労支援機関であれば、精神障害者とやり取りする場合に、医療機関との連携は必要となるケースが多いです。
また、就活のための費用捻出のために、家庭とのやり取りが必要になったり、地域の生活支援センターにコーディネートすることもあります。
そのため、「いつまでに何を支援する」ということが即決できない場面に出くわすことがあります。ここで矢継ぎ早に「できます」と言ってしまうと、障害者側はできることと認識してしまいます。
結果的に予定のスケジュールで事がうまく運ばない場合、支援者への信頼感を損ねることにつながります。場合によってはクレームにもなりえます。その結果、支援者が自分で自分の首を絞めて、病んでしまうということになりかねません。
かといって、何でもできないと言ってしまうのは、それはそれで問題です。
大事なこととしては、できることとできないことは、あらかじめ障害者側とすり合わせをしておくこと、できないことはできる範囲でかなえられるように善処することです。
何でもかんでも「やります」というのが良いわけではないんだね
その通りですね。できるできないの中で、どのように支援機関を活用するかは本人が決めること。支援者が手取り足取りするのが得策ではありません。
③コラム法を活用する
3つ目の精神保健福祉士が病まないための対処法は、コラム法を活用することです。
コラム法とは、精神科の認知行動療法などで活用する、自分の認知・感情を整理する方法です。
それは患者さんがやることじゃないの?支援者がどう活用するの?
ケースや日々の業務で起きたショックな出来事を見つめなおすのに活用できますよ♪
コラム法は、起きた出来事に対してどう思ったか?それをどう捉えなおすか?結果的に点数でどれくらい新庄に変化があったか?をリスト化する方法です。
具体的には、「出来事」「自動思考」「感情の点数化」「適応的思考」「感情の再点数化」の順で考えていきます。
実例で紹介していきましょう。
<ケース例>
Aさんは地域の就労支援センターで就労支援を行っている支援員。ある日、担当している統合失調症の利用者Bさんからメールをもらう。その中身には、「いくら面接を受けてもうまくいかない!Aさんは口ばっかりで本当は応援してくれていないんだ!これからどうすればいいの!?」と書き連ねられていた。
コラム法では以下のように整理していきましょう。
出来事(事実のみを書く) | Bさんから就活がうまくいかないことへの不満がメールで送られてきた。自分に対しての不満もメールには書かれていた。 |
自動志向(その時に自分はどう思ったかを書く) | Bさんに不快な思いをさせてしまった。自分は支援者失格なのかもしれない… |
感情の点数化(100点満点中何点か?) | 悲しみ:100点 不安:80点 |
適応的思考(客観的に振り返って別の考え方がないかを探る) | 統合失調症の症状が悪化したのかもしれない。服薬を忘れてしまっているのかも?体調の聞き取りなど、個別の面談が必要ではないか? |
感情の点数化(適応的思考を経て、点数を再度つけてみる) | 悲しみ:50点 不安:20点 |
このような具合に、5つのプロセスを整理することで、主観的な感情に陥らないようにする方法がコラム法です。支援は人間同士のやり取りになるため、経験が浅いうちは特に、一つ一つの出来事に右往左往しがちです。
精神保健福祉士と言えど人間なので仕方ありませんが、業務上、客観的・中立的な目線が求められます。
コラム法は物事を主観的に捉えがちな人ほど有効な手段なので、思い当たる人はぜひ取り組んでみてください。病む病まない関係なしに、客観的に物を捉えやすくなりますよ。
どうしてもきついなら転職を考える

最後に、精神保健福祉士の業務がどうしてもきついなら転職を考えるのも一つの手です。
「ここまで言っといて転職?」と思われるかもしれませんが、何も福祉の世界から身を引けと言っているわけではありません。
精神保健福祉士の活躍の場は多様化が進んでいます。直接支援が自分に向いていないと感じたら、自治体の障害福祉課などで、後方支援に従事する手段もあります。事務方が向いていないと感じたら、精神科デイケアや地域活動支援センターなど、より障害者に接する機会を増やす手段もあります。
一つのフィールドでうまくいかないからといって、精神保健福祉士に向いていないということではないですよということが伝えたいんです。
確かに対人援助職は向き不向きはあるものの、障害者と接する場面は今後ますます増えてきます。
精神保健福祉士の資格を持って社会生活を送ることは決して無駄にはなりません。
ぜひ積極的にチャレンジしていってほしいと思います。
精神保健福祉士の取得方法や勉強法は以下の記事をご参照ください!
→精神保健福祉士の受験資格が3分で丸わかり!現役PSWがパターン別で解説してみた!
→【2022年】精神保健福祉士の勉強法解説!最短3か月で誰でも働きながら合格可能!
まとめ
- 精神保健福祉士が病みやすいのは資格の有無ではなく、対人援助職の業務特性に原因がある
- ゴールが見えない、労力に対して報われない、悩みをシェアしにくいといった理由から病みやすい
- ケースを複数人で対応する、できるできないの線引きをする、コラム法を活用するなどの方法で病むのを防ぎやすくなる
- どうしてもきついなら別の分野に転職して精神保健福祉士資格を活かす手段もある
いかがでしたでしょうか?
精神保健福祉士は対人援助職ゆえに病みやすい側面があるのは事実です。
しかし、明確な理由を知れば、それを防止する対処法も必ずあります。特に職員の定着に気を遣う事業所は増えてきているため、ネットの憶測に惑わされずに、自分なりに情報収集を進めてくださいね。