就労移行支援事業所に通ってみたら?って知り合いから勧められたんだけど、具体的にはどんなことしてくれるの?とっとと就職したいから、あまり気が進まないんだけど…
就労移行支援事業所は通常2年間の利用期間のなかで、一般就労を目指して職業訓練を行う福祉サービスです。何の訓練をするか以上に、どんな能力を将来的に身につけたいか意識することで、大きく成長ができるサービスです。
今回は就労移行支援事業所の概要やサービス内容について取り上げていきます。興味がある人はもちろん、就労移行の訓練に必要価値を見いだせないという人にもささる内容を書いていきます。
・就労移行支援事業所で訓練を受けることの本質
・就労移行支援事業所とは?
・就労移行支援事業所の求職支援サービス
・就労移行支援事業所の定着支援サービス
以上の内容について話していきます。
目次
就労移行支援事業所で訓練を受けることの本質
さっそくですが、そもそも就労移行支援事業所で訓練を受ける本質とはなんだと思いますか?
訓練はきっかけでしかない
「事務系の仕事に就きたいからパソコン技能を学ぶ」など、一見理屈は通っていますが、それであればハローワークの職業訓練などでも代替はできると思います。
ではなぜ、わざわざ就労移行支援事業所に通う必要があるのか?私はこのように考えています。
訓練という媒体を通して、自分が気持ちの受け取り方や向き合い方のクセを知るため
つまり、訓練プログラムは自分の気づきを得るためのきっかけでしかないんです。カレーで言えば福神漬け、ラーメンで言えばメンマみたいなものです(言い過ぎ?)。仮に志望職種と異なる訓練プログラムであっても、気づきさえ得られれば、自己分析を深められ、次に仕事選びで失敗する可能性をグッと減らすことができます。
また、個人的に良い就労移行は、本人たちに気づきを”それとなく”得られるよう促せる支援員が多い事業所だと感じています。
就労移行支援事業所のおすすめの選び方・事業所については以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
→【2021年版】本当におすすめの就労移行支援事業所3選【現役支援員が解説】



訓練は必要でないと感じる人の方が必要であるという逆説
就労移行支援事業所を行くかどうかを検討している段階で、今までどこかしらの企業に属していて、なにかしらの理由で退職をしたことがあることがほとんどです。
違法スレスレのブラック企業で働いていて、単純に運がわるかったという人もいます。ただ、本人の物事の受け取り方がきっかけとなって退職となっている人の方が多いのも事実です。
こうした方は、就労移行支援事業所で自分と向き合う時間をもつことで成長できる可能性があります。
「就労移行支援事業所に通う必要なんてない!」と主張する相談者の方は年間で何人かお会いすることがあります。もちろん自己決定が大事なので、そういった方に就労移行を勧めることはありません。
しかし、そうした気づきを得ずに次のステップを踏んでしまうと、同じような失敗をする可能性が大きいです。
皮肉にも、自己理解がしっかりできており、就労移行を使わずに就職できそうな人ほど、利用を前向きに考えていたりします。逆に、本来必要なのではないと感じる方が利用に否定的であるというケースが存在しています。
はじめから必要ないと切り捨てるのではなく、本当に自分にとって不要なものかを考えてから決断しても遅くはないでしょう。もう一度言います。訓練の本質は「気づきを得るため」です。
障害者雇用にチャレンジするかどうかも含めて悩んでいる方は以下の記事も参考にしてみてください。
就労移行支援事業所とはどんな福祉サービスか?
それでは就労移行支援事業所とはどんな福祉サービスかを実際に紹介していきます。
ひとことで言えば、就労移行支援事業所とは職業訓練を提供する通所サービスです。ひとつずつ概要を紹介していきます。
利用対象者
一般企業への就労を希望している18歳以上65歳未満の障害者が対象となっています。
ポイントとしては、障害者手帳を所持していなくても利用できるという点です。後述しますが、就労移行支援事業所は障害者総合支援法のなかの福祉サービスにあたるため、福祉サービス受給者証さえあれば利用できます。
ただし、障害者雇用で就職する場合は障害者手帳が必要となるため、就職段階までには所持している方が大半です。
利用期間
最大24か月間(2年間)利用できます。
ただし、就職に至らず、さらに訓練の必要があると認められた場合は、プラス12か月間(1年間)の延長が可能です。延長の際には自治体への届け出が必要です。
ちなみに2021年4月時点においては、コロナ禍で求人が減っていることを考慮され、1年延長のハードルがゆるくなっているという情報をよく耳にします。
提供プログラム
提供される訓練プログラムは各事業所によって様々です。ビジネスマナーやパソコンプログラムを組み入れているところは比較的多いと感じます。それ以外にも、現役の化粧品会社の社員を呼んだ整容プログラムやネイリスト育成のプログラムを提供している事業所などもあります。
なかにはe-sports業界への就職に向けて、ゲーム実習、動画編集をプログラムとして提供している事業所もあるようです。とてもユニークで面白い感じたので、ぜひ見てみてください。
参考:ACADEMIA
利用料金
就労移行支援事業所は前年度の世帯収入に応じて変動します。
世帯ごとの収入のため、もし一人暮らしで前年度就労をしていない場合は、費用無料となります。
また、自治体によって通所時の交通費助成があります。詳しくは最寄りの役所の障害福祉課にお聞きください。参考として横浜市の助成制度を画像として添付しておきます。
利用手続き
こちらはNPO法人クロスジョブの就労移行の利用の流れです。細かな違いはあれど、予約→見学・説明→体験利用→利用手続き(福祉サービス受給者証発行)→本利用の流れは同じです。
福祉サービス受給者証の発効は以下の画像を参考にしてください。
煩雑そうに見えます…というか実際そうなのですが、以下の点だけ抑えておけば大丈夫です。
- 申請から発効までに1~2か月ほどかかる
- 発行待ちの状態でも、体験利用扱いで通所が可能な就労移行支援事業所は多い
- まずはお住まいの自治体の障害福祉課で手続きを行う
就労移行支援事業所を利用してから就職するまでの流れ
就労移行支援事業所は2年間の期間の中であれば、いつ就職活動に移っても構いません。
しかし、ほとんどの移行支援事業所は就職までの支援プロセスを独自に組んでいます。
ここでは、どの就労移行支援事業所にも共通している支援プロセスを、時系列順に紹介していきます。
①通所・求職活動に関する相談や支援
通所開始当初は、プログラムに参加しながら通所することに慣れていきます。
今後の目標を定めていくために、定期的な面談の場を設けられることが多いです。
②本人の適性に合った職場探しやアセスメント
就労移行支援事業所は、訓練を通して得られた本人の強み・弱みをアセスメント(評価)していきます。
アセスメント内容を踏まえて、職場開拓・求人検討を行っていきます。本人の適職が希望職種と異なる場合には、本人と相談していきすり合わせを行っていきます。
③企業での見学・職場実習などの機会の提供
就職活動段階になったら、②でピックアップしていった企業に応募していきます。その際にミスマッチングを防ぐために、会社見学や職場実習を企業側に提案していきます。
もちろん、すべての企業が実習を受けつけてくれるわけではないので、応募を優先するか、見学・実習を優先するかは支援員と要相談です。
④応募書類の添削、模擬面接などの就職活動サポート
いよいよ面接を重ねていく段階になったら、応募書類の添削や模擬面接などのサポートを行っていきます。
応募書類には障害上の配慮事項などを記載する必要があるため、支援員とよく相談の上で作成していきましょう。
就労移行支援事業所から就職してから職場に定着していくまでの流れ
晴れて就職を果たした後も、就労移行支援事業所を通して、最大3年半の定着支援のサービスを受けることができます。
アフターフォローとして6か月間の支援を受けられる
まず、就職後半年間はアフターフォロー期間として、就労移行支援事業は6か月間の職場定着支援を行うことが努力義務として規定されています。
就職したばかりのころは、環境変化によるストレスが想定されるため、特に密なケアが必要となる方は多いです。
この時期は職場定着に重要な時期として、職場訪問を通して、職場への定着をはかっていきます。
就労定着支援事業による最大3年間(就職してから3年半まで)の支援を受けられる

半年間の定着支援を終えた後は、最大で3年間の就労定着支援を受けることができます。この3年間の支援サービスを「就労定着支援事業」と呼び、障害者総合支援法の福祉サービスの位置付けられます。
就労定着支援事業の詳細は以下の記事を参考にしてみてください。こちらでは簡潔にポイントだけ書いていきます。
→【2021年版】就労定着支援事業とはなにか?トラブルにならないための3つの掟、教えます。
月1回の対面支援サービス
就労定着支援事業は月1回の対面支援サービスとなっています。2021年時点では、企業訪問を通しての支援が望ましいとされていますが、義務とはされていません。
(2021.4.25追記)2021年4月の障害福祉サービスの報酬改定により、対面支援である必要はなくなりました。その代わり、支援レポートの提出が義務付けられています。
そのため、就労者のOB会という形で就労移行支援事業所にて近況確認を行うなど、事業所によって様々な形で支援が行われています。
有料の支援サービス
就労移行支援事業は福祉サービスにあたります。ということは、世帯収入次第では自己負担が発生するということです。詳細額は「就労移行支援事業所とはどんな福祉サービスか?」の項目をご確認ください。
前年度の世帯収入によるため、もし就労移行支援事業通所時から費用負担が無かった方は、自己負担が発生するのは2年目からになります。給与条件によっては、費用負担が無いままの場合もあります。
サービスを受けるかどうかは任意
抑えておきたい点として、サービスを受けるかどうかは任意ということです。
費用負担を懸念して、就労移行支援事業を利用途中に終了される方もいます。そういった方は、地域の障害者就業・生活支援センターへ支援を引き継いでもらうこともできます。
→障害者就業・生活支援センターとは障害者雇用の何でも屋!働くを楽にするためのサービス内容を総まとめ!
利用してから3年ではなく、就職してから3年半までの間しか利用はできない
就労移行支援事業は「利用開始から3年まで」ではなく、「就職してから3年半まで」の利用となります。
これは私たち支援者でも誤解しやすい点なので、実際の例も踏まえて紹介しておきます!!
<就労移行支援事業所Aを通して事務系の会社に就職したBさんのケース>
Bさんは就職後にA事業所のアフターフォローの支援を半年間受けていました。順調に勤務できていたため、就労定着支援事業は使わずに支援なしで働くことにしました。
ところが、就職して3年が経過した段階で、部署異動があり、環境変化から体調が悪化してしまいました。支援機関に介入してほしいと思ったBさんはA事業所に連絡を取り、就労定着支援事業の利用を決めました。
就職してからすでに3年が経過したため、就労定着支援事業は半年間の利用しかできませんでした。いったん、就労定着支援事業を半年使うことに決めて、それでも体調が回復しなければ障害者就業・生活支援センターに支援を引き継いでもらうことになりました。
といった具合です。利用してから3年フルに使えると思っているとこうした落とし穴があるので、留意しておいた方が良いでしょう。
まとめ
- 就労定着支援事業に通う本質は自分の特性や課題に対して気づきを得ること
- 福祉サービスのうちの1つで、プログラムは事業所によって大きく異なる
- 就職前はプログラム受講以外に企業見学・実習の機会を得られる
- 就職後は最大で3年半の定着支援サービスを受けられる
いかがでしたでしょうか?
就労定着支援事業は事業所に「就職させてもらう」という意識ではなく、利用してどのような能力を伸ばしたいかを意識して利用することをオススメします。
主体的な利用を通して、悔いのない就職活動ができるよう応援しています。ではまた!
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