特例子会社の就職に興味を持ってるんだけど、実際どうなの?
特例子会社はヘタすると、一般企業よりも障害に配慮されにくい環境になることがあります。特例子会社に興味がある人はぜひ知っておきましょう。
特例子会社は障害者を中心に雇用している企業を指します。基本的には障害に配慮のある会社がほとんどですが、企業規模が大きくなるにつれ、支援の臨機応変さが無くなったり、ルールが厳格化されていくといっ実態があります。
今回は特例子会社に興味のある障害者や家族、支援者向けに特例子会社の実態を紹介していきます。
ぜひ予備知識として知っておいてください。
この記事を見れば知ることができること
- 特例子会社の概要
- 特例子会社の実態
- ブラックな特例子会社を避けるための方法
それでは一つずつ見ていきましょう。
目次
特例子会社とは

特例子会社とは、ひとことで言えば、障害者を中心とした社員雇用をしている企業を指します。
具体的には、事業主が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たす場合には、特例としてその子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなして、実雇用率を算定できる制度そのものを指します。
なお、特例子会社の設立要件は以下の通りです。
(1) 親会社の要件
○ 親会社が、当該子会社の意思決定機関(株主総会等)を支配していること。
(具体的には、子会社の議決権の過半数を有すること等)
(2) 子会社の要件
① 親会社との人的関係が緊密であること。 (具体的には、親会社からの役員派遣等)
② 雇用される障害者が5人以上で、全従業員に占める割合が20%以上であること。
また、雇用される障害者に占める重度身体障害者、知的障害者及び精神障害者の割合
が30%以上であること。
③ 障害者の雇用管理を適正に行うに足りる能力を有していること。
(具体的には、障害者のための施設の改善、専任の指導員の配置等)
④ その他、障害者の雇用の促進及び安定が確実に達成されると認められること。
特例子会社は、企業側、特に大手企業にとっては雇用率を満たすで有効活用しやすく、配慮がある環境を求めている障害者にとっても人気が高いことから、右肩上がりで数が増え続けています。

特例子会社はニーズが高いんだね!
そうですね、日々の相談の中では、一般企業就職に不安を抱えている方々やその家族から人気が高い印象を受けます。
特例子会社の実態

それでは実際に特例子会社の実態を紹介していきます。
特例子会社は設立当初は、どこも柔軟且つきめ細かく支援をしてくれていますが、社員数が増えるにしたがって構造上の問題があらわになってくる企業が本当に多いです。
最近、私が特例子会社の支援で感じている実態を元に、紹介していきます。すべての特例子会社に当てはまるわけではないので、あくまで参考としてご覧ください。
特例子会社にもメリットはあるため、以下の記事も併せてご覧ください。
→特例子会社のメリット・デメリットを忖度なしで教えます【現役支援員が解説】
①人によっては一般企業より配慮が行き届かなくなる
1つ目の特例子会社の実態は、一般企業よりも配慮が行き届かなくなるといったものです。
え!?だって特例子会社って「特段の配慮がされる」会社なんでしょ?
現場としては、支援の質を高めようと考えている会社は多くありますよ。ただ、会社が成長するにしたがい、配慮が次第に行き届かなくなるんです。
イラストを用いて、順に説明していきましょう。
まずは特例子会社の設立初期段階からです。

初期段階では、社員一人一人の雇用管理負担が少ないため、社内の支援が行き届きやすいです。応募者に受け入れてもらえる環境体制の構築にマンパワーを注ぐことが出来ており、地域の関係期間(特別支援学校など)を中心に、人気の高まりやすいフェーズです。
続いて中期の段階です。

中期段階では高まった人気から社員数が増え、次第にマンパワー不足に陥ります。企業は社員の補充を行いますが、就労支援が未経験という社員がいる観点から、雇用管理ルールを作るパターンが多いです。
体調チェックシートや日報での業務報告などがオーソドックスな例ですね。対面支援よりもツールを通しての支援割合が増えてくる時期です。
しかしながら、もうけられたルールに適応できない人は当然として発生します。たとえば、日報一つ取っても、障害上、うまく言語化できない人は存在します。ルールに適応できない障害者社員に対して、個別にテコ入れできない場合、障害者側は当然ストレスをため込むことになります。
そして、テコ入れできない企業は末期段階に進んでいきます。

末期段階では、抑圧された障害者がストレスを爆発させ、体調不良や、同僚や社員とのケンカ、指示への無視といった形で問題行動を起こすケースが見られます。中期段階で手を打っていない企業にありがちなのが、その問題行動だけ取り上げて、障害者社員への離職を促すといった対応です。
こうした企業は、管理できるボーダーラインからあぶれた人を無意識に排除する社風になっていることを、おろそかにしがちです。
ルールやツールをもうけることは、もちろん悪いことではありません。しかし、障害者雇用はいついかなる時も個別支援が原則です。ルールやツールで一括管理しておしまいではありません。
起こした問題行動はもちろん良くはないことです。しかし、「しっかり個別支援をしていたか」という原因に目を向けられない企業は、初期段階からの企業イメージとの乖離から、次第に人気が低下していきます。
といったように、最初はそれぞれの障害に基づいた支援をしてくれていたのに、人が増えたことで、「企業の文化に適応できるかどうか」といった尺度で対応をしてしまいがちな点が特例子会社の実態です。
冒頭の結論に戻りますが、結果的に一般企業で働くよりも配慮が行き届かなくなりがちなのが実情です。
②支援に臨機応変さが無い
2つ目の特例子会社の実態は、支援に臨機応変さが無いということです。
先ほど述べたように、特例子会社は人が増えてくることによって、一律管理をしたがる傾向があります。
そのため、個別支援に関しては、我々のような支援機関との定期訪問の時に一括で済ませがちです。ただ、いくら個別支援といっても、結局のところ、日々関わる中での社員からの声掛けや対応を無くして就労継続って成り立たないです。
障害者社員が多くなることで、こうした臨機応変さが失われがちなのも、特例子会社の特徴と言えます。
また、よくありがちなのが、問題があってもなくても支援機関の訪問ペースを「○か月に一回」と事前にルール化しているケースです。本人だけでなく、支援機関の訪問まで同じようにルール化するのは、本質からずれているのでは…と感じることが少なくないです。
何でもかんでもルール化しすぎる特例子会社には注意した方が良いかもしれません。
③職種が限定的になりがち
3つ目の特例子会社の実態は、職種が限定的になりがちということです。
特例子会社は性質上、配慮を求めて障害が重い方も多く受けられます。そのため、どんな障害の人でも仕事ができるように作業を分断化しているケースが多いです。
そのため、事務職でもスキャニングのみだったり、紙漉きなどを行う企業では、紙の千切りの身を中心に行う社員がいます。
同じ作業をずっとこなすことが苦手という方にはややつらいかもしれません。ただ、この点はジョブローテーションという形で、定期的に作業内容を変更させている企業もあるため、確認しておくと良いでしょう。
④本社の意向によって社内方針が左右されがち
4つ目の特例子会社の実態は、本社の意向によって社内方針が左右されがちということです。
特例子会社でありがちなのが、現場の支援キャパに見合っていない人数を採用して、収拾がつかなくなるパターン。
— エドガワ@障害者ワークナビ管理人 (@edo_work_navi) December 23, 2021
採用計画の権限が本社にあると、子会社の意向が反映されづらいため、質の悪さに拍車をかける。
結果的に特例なのに配慮されにくくなるといった事態もありえる。#障害者雇用
ここまで読んだ方の中には、「人を増やしすぎて収集つかなくなるなら、人数絞って雇用すればいいのに」と感じる人も多いかと思います。
ここで特例子会社の設立要件を振り返りますが、特例子会社は「親会社が意思決定機関(株主総会等)を支配していること」とされています。
つまり、採用計画の権限はすべて本社の意向次第であるのが実情となります。会社組織である以上、子会社は親会社の意向に従わざるを得ません。
こうしたトップダウンの構造上の問題が、結果的に特例子会社の臨機応変さを失わせたり、配慮不足の原因を招いていることは否めないと感じます。
ブラックな特例子会社を避けたいなら支援機関を活用する

すべての特例子会社でないにせよ、そういうブラックな特例子会社には就職したくないよ、どうやって見極めればいいの?
ズバリ、地域の支援機関を活用して情報収集しましょう!
ブラックな特例子会社を避けたいなら地域の支援機関を活用しましょう。
興味のある特例子会社が、今までに書いた実態に当てはまっているかを、応募前段階で把握することは至難の業です。ハローワークなどの求人紹介先でも実情を細かに把握していることはまれでしょう。
そのため、該当する特例子会社に対して、支援履歴の有る支援機関で相談に乗ってもらうことが情報のリサーチ先としてはオススメです。
候補としては、障害者就業・生活支援センターや就労移行支援事業所などが挙げられます。
<参考記事>
仮に支援履歴が無かったとしても、支援機関の協力を仰ぐことで実習のコーディネートをしてくれたり、就業後も定期的に支援をしてくれます。
選択肢の一つとして考えておいても良いでしょう。

まとめ
- 特例子会社は雇用人数が多くなるにつれて、配慮が行き届かなくなりがち
- 本社の意向によって経営方針が左右されがちな点が構造上の問題点として挙げられる
- ブラックな特例子会社を避けたいなら、支援機関の活用がオススメ
いかがでしたでしょうか?
特例子会社は人気がある反面、適応できない場合、期待以上の配慮が行き届かないというリスクがあります。
特例子会社に興味がある人は事前のリサーチはもちろん、実習制度があればぜひ活用すると良いでしょう。
特例子会社に就労経験がある元社員です。まさしく記事に書かれているような配慮なき待遇を受けて退職に至りました。
特例子会社というシステムの欠陥について大変わかりやすく書かれており、とても共感できました。このような実態を発信してくださる方が一人でもいることを大変心強く思います。