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就労移行の訓練が意味ないってホント?金儲け目的の就労移行の見分け方を支援員目線で解説

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就労移行のことを調べてると「就労の訓練に意味ない」ってSNSでヒットしまくるんだけど、これって本当なの?

ぶっちゃけで言えば、本当に通う意味のない事業所もあれば、利用者本人が移行のメリットを取り違えて意味が無くなる場合が混在しています。

就労移行の訓練は意味がないという意見がSNS上でよく目にされます。利用を考えている人にとっては、ネットの意見はついつい気になるものですね。

結論から言えば、「訓練の意味がない就労移行は存在するが、すべてがそうではない」が正しいです。訓練の意味がくなる理由は、事業所側にあったり、障害者側にある場合とで混在しています。

立場上、移行を運営している企業がおいそれと発信もできないため、実態が表に出にくい点も、ややこしさに拍車をかけています。

今回は第三者の障害者就業・生活支援センター職員の立場から、就労移行の訓練の意味について解説していきます。

就労移行の利用を検討している方、すでに利用している方、支援者の方はぜひご覧ください。

この記事を見れば知ることができること

  • 就労移行の訓練に意味がないとされる理由
  • 就労移行の訓練に意味をもたせるための心構え
  • 通う意味のある事業所にめぐりあうためのコツ

それでは一つずつ見ていきましょう。

就労移行の訓練が意味ないと言われる理由3選

さっそくですが、就労移行の訓練が意味ないとされている理由をピックアップしていきたいと思います。

志望職種と全然関係ないことをやらされる

1つ目の就労移行の訓練が意味無いと言われる理由は、志望職種と全然関係ないことをやらされるからというものです。

わかりやすい例で言うと、事務職志望なのに、金具の組み立てなどの軽作業を自習時間にやらされるといった具合です。

それじゃあ意味ないじゃん!事務ならPC作業が当たり前でしょ!

意図があってやらせている場合と単純に事業所の慣習に沿わせている場合があります。

就労移行に行くと志望職種と関係ない訓練をやらされることがあります。

ただ、関係ないことをやらされる=悪いこととは言い切れません。たとえば単純作業を通して、集中力をはかってり、まずは簡易的な報連相ができているか…などの実務外の能力をはかっている場合があるからです。

一方で、支援員が訓練の意図をなんとなくしか理解しておらず、「そういった決まりになっているから」ということで、とりあえずその訓練をやらせてしまっているケースも存在します。

大事なこととして、志望職種と関係あっても無くても「なぜその訓練が必要か」を利用者に説明することに尽きます。みなさんが利用者であれば、支援員にしっかり訓練の意図を説明してもらうようにしましょう。

ただなんとなく訓練をしていると、通っても意味のない毎日になってしまいます。

毎日行っても企業に評価されないから

2つ目の就労移行の訓練が意味ないと言われる理由は、毎日行っても企業に評価されないからというものです。これに関しては、「半分合っていて、半分間違っている」と言えるでしょう。

正確には「ただ通っているだけでは内定をもらえるわけではない」ということです。企業が求める能力は多岐に渡ります。

エージェントサーナ

グラフを見ればわかる通り、コミュニケーション能力や職務経験と実績、障害の内容などが重視をされます。訓練や実習を通じて上記の能力を培ってきたことをアピールすることで、はじめて内定に近づくことができるというわけです。

とはいえ、就労移行に長く通所できていることは、一定の体力があることの裏付けになります。

また、通って1か月程度しか経っていないのに「就労移行の訓練で成長しました」と言っても嘘くさくなるので、やはり一定の通所期間通うことに意味はあると思ってもらって良いでしょう。

就職したくてもさせてくれない

3つ目の就労移行の訓練が意味ないと言われる理由は、就職したくてもさせてくれないというものです。

訓練の意味がないと言われる理由のなかでも、一番と言っていいほどよく聞かれる話です。就労移行は訓練者数と実績に応じて、報酬が国から支給されます。そのため、「就職させずに就労移行に留まらせるのが目的ではないか?」と考え込んでしまう障害者も一定数存在します。

私自身もよく障害者から相談に乗ることがあります。

就職させてもらえないケースでの相談を受けた場合は、まず就労移行の担当職員に経緯をうかがうパターンがほとんどです。以下が実例です。

<就労移行で就職させてもらえなかった経緯> ※就労移行の職員からのヒアリング内容を記載

  • まだ体調が万全でなく休みも多いが、本人の就職をしたい意向が強かった。もう少し様子を見ては?と伝えたが話は平行線になった
  • 本人が希望する求人はハイレベルばかりで、こちらで提供できる実習先が見つかっていない
  • すでに就職活動に移っているが、面接には落ち続けている、元々○か月で就職したいという本人のニーズに叶っていないため不満が募っている
  • 地域的に求人数が少なく、就職させたくてもなかなか良い求人が無い

就労移行に対する期待値が高ければ高いほど、現実とのギャップで不満に近づいていく傾向があります。私自身は障害者と就労移行のどちらかが悪いと責任を押し付け合うのはナンセンスだと感じています。

日々の訓練の中で、目標とのギャップをどう埋め合わせていくかの対話こそが重要です。

利用者側はお客様感覚で通所せずに「どのように活用するか」という視点を持つことが大事です。就労移行側も、見学の段階から、実例を踏まえて、できるできないの線引きをしっかり提示することが求められます。

就労移行の訓練に意味をもたせるための心得

次に就労移行の訓練に意味をもたせるための心得を紹介していきます。

就労移行に通う際の本質的な部分になりますので、通った後に後悔がないよう、必ずチェックしましょう。

実務や資格取得目的では行かない

1つ目の就労移行の訓練を意味あるものにする心得は、実務や資格取得目的では行かないことです。

え!?訓練のために行くのに、なんで資格取得目当てがダメなの?

就労移行で獲得できる資格としては、MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)や秘書検定などがあります。しかし、無意味とは言いませんが、これらの資格や訓練での実務経験が内定に直結するわけではないのが実情です。

資格は「無いよりはある方がマシ」といった程度でしょう。先ほどのグラフで言えば、取得資格を重視する企業は約0.6%、パソコンスキルも約10%前後と決して高くはありません。

それより訓練で重視してほしいのは、コミュニケーション能力などのヒューマンスキルの構築や障害特性への理解です。

ヒューマンスキルや障害特性理解は入社後に鍛えることが難しい部分になります。よほどのハイレベル求人で即戦力を求めてもいない限り、ヒューマンスキルの高い人物への採用に力を入れている企業が多い印象を受けます。

就労移行への訓練を意味あるものにするためにも、実務や資格取得のみに目がくらまないようにしましょう。

支援者を聖人君子だと思うな

2つ目の就労移行の訓練を意味あるものにする心得は、支援者を聖人君子だと思わないことです。

就労移行の支援者は、質はまちまちというのが実情です。というのも近年、株式会社の就労移行への新規参入も増えてきており、支援未経験の職員は非常に多くなっています。

新しい支援員の参入は喜ばしいことですし、他業界での経験を支援に活かすことも歓迎したいところです。一方で、良かれと思って自分の社会人的な観念を押し付けることで、利用者側がきゅうくつな気持ちになるケースも見られます。

障害者側ができることとしては、こうした現状を把握の上、支援者への期待値を高く持ちすぎないことが重要です。

それじゃ支援員の意味なくない?

自分の頑張りの方向性が間違っていないかを、第三者目線でフィードバックしてくれる存在として重要です。

「支援者=自分を理解してくれるもの」と捉えると期待が裏切られる可能性があります。あくまで、自分の訓練の進捗や今後の目標をアドバイスしてくれる存在として活用すれば、程よい距離感で訓練に集中しやすくなると思います。

利益目的で就職させないわけではない

3つ目の訓練に意味をもたせるための心得は、利益目的で就職させないわけではないことを知っておくことです。

就労移行に疑念を感じず、訓練に集中するための心得と言えます。

でも就労移行って利用者の数に応じて利益が入るんでしょ?就職させない方がもうかるんじゃないの?

実際の報酬システムでは、就職および就職後の定着期間の実績が評価される方向になっています。

令和3年度の障害福祉サービスの報酬改定では、就労移行支援の就労割合が高い事業所に対して、評価される基準が加速しています。

また、就職後に最大3年間の就労定着支援サービスを行う就労定着支援では、より就労定着率が高い事業所には高い報酬を与えるよう見直しがされています。

細かな数字は覚える必要は無いですが、就労定着支援事業は最大3,000単位以上と、今や就労移行の運営には欠かせないサービスとなっています。

就労定着支援事業については、以下の記事をご覧ください。

【2021年版】就労定着支援事業とはなにか?トラブルにならないための3つの掟、教えます。

つまり、お金のことだけを言うのであれば、「利益のために就職させない」のではなく、「とにかく就職してもらって職場定着してもらいたい」方が理にかなっていることになります。

支援員目線で言うと、むやみやたらに就職させている事業所の方が「大丈夫か、この就労移行…」ときな臭く感じます。

別に就労移行に対して疑念を感じることが悪いと言うつもりは全くありません。疑問を感じるということは、自分事として目の前の物事に集中していることと言い換えることもできます。

とはいえ、疑問を感じるのであれば、情報の裏取りをしてから批判しないと自分が損することになります。間違ったネットの情報にまどわされて、自分の訓練に身が入らなくなっては本末転倒です。

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金儲け目的の就労移行は訓練の意味無し!!

結局、こっちの心構え次第なの?就労移行はどこ選んでも大丈夫なの?

いいえ、事実として金儲け目的の行っても意味のない事業所は存在しています。

いくら心構えができていても、通う意味のない就労移行に出会うリスクは存在します。

通う意味のない事業所の代表例は「金儲け目的の事業所」と言われています。利用者を集めるだけ集めて利益を得て満足している事業所全般を指します。

誤解を恐れずに言えば、金儲けが悪いではありません。就労移行は障害者総合支援法に含まれる福祉サービスですが、慈善サービスではありません。母体が株式会社の場合、マネタイズを考えることは当たり前のことです。採算度外視では、当然つぶれる可能性もあります。

問題なのは、支援の質の担保を後回しにして、利用者を入れていたり、むやみに就職させている事業所です。

具体的には以下のような事業所が該当します。

<要注意!>金儲け目的の就労移行にありがちな特徴

  • 支援員の年齢が20代、30代に集中しており、福祉経験者が少ない(ベンチャー体質)
  • 相談に乗っても理詰めにされて否定されるorすべて肯定(≠受容)されて意見がもらえない
  • プログラムを通して獲得できる本質的なヒューマンスキルなどを答えられない
  • 約束していた定期面談のスケジュールを守ってくれない(見通しを立ててくれない)etc

ただ、基本的に金儲けだけが目的かどうかの判別は難しいと思った方が良いでしょう。「ぶっちゃけ金儲け目的ですか?」とたずねたところで、首を縦に振る事業所は存在しません。

そもそも、みなさんは金儲け目的の事業所を見つけるのではなく、良い事業所に巡り合って就職を果たすのが目的のはずです。

そのため、上記のような質の担保がされていない就労移行の利用を避けることに集中すれば良いでしょう。

「なんで通う側の障害者側が気を遣わなくちゃいけないんだ!」という声が聞こえてきそうですが、気持ちは痛いほどわかります!

しかし、実情として就労移行のマーケットに参入している企業は急増しています。自衛の心構えは持っておくに越したことはありません。

就労移行の訓練は予備校と似ている

就労移行の訓練に対し、利用者と事業所側でトラブルになるのは今も昔もよくある話です。

不満があった時の心の落としどころとして、就労移行の訓練は予備校と同じという意識を持つことをオススメします。

たとえば、大学受験予備校で早慶コースに入学したからといって、早慶への合格が保証されているわけではありません。どこの予備校も、毎年良くて合格率数割と言われており、半数以上はマーチなどの下位大学へ進学していきます。

かといって受験生やその親が予備校にクレームを入れるといった話はほとんど聞きません。というのも大学受験は、受験生の根底で「どこの予備校に行っても、最後は自分次第」という心理が働いているからです。クレームを入れる受験生がいたら、それこそ考え物です。

就労移行も予備校と同じです。どんなに訓練(授業)が魅力的でも、就職にまでこぎつけるには、自分の日々の努力にかかっています。どんなに支援員(先生)が経験豊富でも、どこまでアドバイスを活かすかは自分の判断にかかっています。

そのためにも、自分の意思が発信しやすく、毎日通っていても苦痛じゃない事業所を選ぶことが超重要です。事業所の選び方は以下の記事をご覧ください。

【2021年版】障害者雇用就職で後悔しないための就労移行支援事業所オススメ3選【現役支援員が解説】

まとめ

  • 就労移行の訓練は、関係ないことをやらされたり、企業に評価されないと言う理由で意味ないと言われやすい
  • ヒューマンスキルや障害特性の理解を深めることを重視すれば訓練に意味合いをもたせやすい
  • 金儲けの事業所は存在するため、ありがちな特徴は押さえておく
  • 就労移行の訓練は予備校と同じものと捉えておく

あれこれ書きましたが、それでも就労移行の役割は大きいです。目的意識をもって中長期間通った経験は一定の評価を得られますし、就職後もサポートしてくれる支援員がいることに意味を見出す人も少なくないです。

そのためにも就労移行に対して正しい認識を持って日々の訓練に励んでもらいたいと思います。

今回の記事がみなさんにとって参考になればうれしいです。

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