障害者雇用にチャレンジしたいけれど、精神障害でも就職できるの?
精神障害ってだけで不利になるんじゃないの?
その心配はご無用!精神障害というだけで不利になることはありません。
むしろ障害者雇用の主流と言っても良いくらい、精神障害者の雇用は当たり前の時代になってるんですよ!!今日の記事を見れば、就職で失敗する可能性をグッと減らせます。
今日は以下の内容について話していきます。
・精神障害者は自身の障害理解さえできていれば、色々な企業で採用されている。
・失敗しないポイント① 具体的な配慮点を固める
・失敗しないポイント② 職場でのキーパーソンを定める
・失敗しないポイント③ 支援機関を活用して職場定着のサポートをしてもらう
目次
精神障害者は障害者雇用のメインストリーム!!
まず、障害者雇用の世界においての精神障害者の雇用状況について整理していきましょう。
精神障害者が全障害の中で一番就職増加率が高い
こちらの図は、障害別の障害者雇用状況を示したものです。

2020年時点において、身体障害者は約35.6万人、知的障害者は約13.4万人、そして精神障害者は約8.8万人となっています。
なんだ全然就職してないじゃん…
たしかに数字だけ見るとそうかもしれませんが、注目してほしいのは精神障害者の就職増加率です。

こちらは2017年の古いデータとなりますが、2007年→2017年の10年間において、4.9倍と大幅増となっています。精神障害者の就職増加率は、2010年から2020年までで比較すると約6.3倍という他障害を圧倒する伸び率をほこっています。
2021年4月時点においては、精神障害者の雇用は珍しいものでも何でもなく、障害者雇用のメインストリームとも言える存在になっています!
うつ病や統合失調症の就職を強みとする就労移行支援事業所や転職サイトが増加しているのは、精神障害者の社会進出が進んでいることが背景として考えられます。
私の勤めている障害者就業・生活支援センターにおいても、新規求職相談は精神障害、発達障害の比率が年を経るにつれ多くなっているように感じられます。
定着率は低いが、適した準備・対策を心掛けた人は長く働けている
とはいうものの、実際にどれくらいの精神障害者が仕事を続けられているかが気になる人も多いのではないでしょうか。
こちらは2017年における障害別の職場定着率を示した図になります。

一年後定着率は精神障害者が49.3%と他の障害よりも低い定着率となっています。
なんだよダメじゃんか!じゃあ就職しても報われないじゃん!
たしかにそう言いたくなる気持ちは分かります。しかし定着している人もいるのも事実です。
私が担当している方の中には、5年はゆうに働いており、簿記の資格を取りつつバリバリ働いている方がいます。転職を繰り返しつつも新たな職場で同じく5年以上ストレスなく働いているという方もいます。
彼ら彼女らは出会った当初、なんなら今でも、ふとしたことで体調不良になる方もいます。時には死にたいという気持ちにおそわれるという方もいますが、働き続けることができています。
そんな中でも仕事を続けられる彼らと、実際に辞めてしまう方の違いは何でしょうか?
たまたま運にめぐまれていた?仕事を続けられる才能があった?
確かにその可能性もあるかもしれません。しかし、私が支援をしている中で感じたのは、長年働けられるのは、就職する前も後も、仕事を続けられるための準備と対策を欠かさなかったであると考えます。
それでは、彼らがどのような準備・対策をしていたかを紹介していきます。
ポイント①服薬・通院配慮は当たり前!それ以上の配慮点を固めておく!
まず、精神障害者が就活で失敗しないポイントの1つ目は配慮点を固めておくことです。
精神障害者の代表的な配慮点として挙げられるのが、服薬配慮と通院配慮です。就業時間中の抗精神病薬などの服薬許可および就業曜日と通院日が重なった場合の休日付与の配慮を指します。
すでに障害者雇用で就職したことがある方は聞きなれている言葉だと思います。
しかし!職場で長く働くことを見据える上では、それ以外の配慮が必要かどうかをしっかりと固めておく必要があります。
ひとつずつ配慮として考えられるものを取り上げていきますので、自分に必要があるかどうかをチェックしてみてください。どれが必要かは人によって異なるので、自分の気持ちと照らし合わせて考えていきましょう。
また、可能な限り就職前(面接選考など)の段階で企業側とすり合わせをしておくようにしましょう。入社後だと内容によっては配慮が難しいと言われる場合もあります。
時短勤務
通常の社員よりも短い時間での勤務時間契約を結ぶ配慮です。就業当初3か月などの期間限定の場合もあれば、無期限で時短勤務をされている方もいます。
どれくらいの時間であれば企業が時短を認めてくれるかについてよく質問を受けます。
一概には言えませんが、とりあえずの回答としては、「最低週20時間、できれば週30時間以上」となります。
根拠として、障害者雇用率の存在があります。週20時間以上だと障害者を0.5人、週30時間以上であれば1人分を雇用しているという計算になるため、週30時間以上働けると応募の幅が広がります。
ただ、週30時間に自信が無くても受け入れてくれる企業もあるので、粘り強く求人を探しても良いでしょう。
メリット:体力的に無理なく働ける
デメリット:就業時間が少ない分、給与が低くなりやすい
休憩時間の調整
通常の休憩時間とは別に小休憩をはさませてもらうといった配慮を指します。
精神障害者の中には、周りが頑張っている中で数分であっても休憩をとることに躊躇される方は少なくないです。
自分ばかり休憩しているような気がする…ほかの人からサボっているとみられているのでは…という被害妄想状態から、体調不良に陥る人もいます。
かといって、集中しすぎてパフォーマンス低下や疲労蓄積につながって困るという方もいると思います。
そんな方は、一時間ごとに5分間の休憩を取るなど、事前に業務スケジュールに組み込んでもらいましょう。業務の一環としての小休憩であれば、休憩を取ることのうしろめたさを緩和させやすいです。
メリット:心理的にも休憩を取りやすくなり、リラックスしやすい。
デメリット:工場などのライン作業や忙しい職種の場合、配慮が難しいこともありうる
業務内容調整
障害特性上、体調不良などを引き起こしやすい業務については、事前に省いてもらう配慮を指します。
代表例でいえば、電話応対などが挙げられるでしょうか。電話の取次ぎにおいて過度の緊張を生じてしまうという障害者に対して、電話応対以外の庶務業務を中心に行ってもらうといった具合です。
ただ、極端な例ですがデータ入力がメインの求人であるのに対して、PCなどの電子機器の使用は苦手なので避けたいと申し出れば、不採用に直結しかねません。基本的には、基幹業務に付随する業務において、配慮を申し出ることを検討していきましょう。
どこまで配慮してもらうかは職種内容によって異なるため、事前に吟味しておくことが必要です。
メリット:障害特性上、苦手な仕事を省けるため、自身の能力を活かしやすい
デメリット:省いてもらう内容によっては配慮が得られなかったり、選考時に不利になる恐れがある
定期的なフィードバック面談
1か月に一回など、決まった時期・タイミングで上司などと面談をもうけてもらう配慮を指します。
精神障害者の中には、自分の仕事ぶりが他者にどう評価されているのか気になりすぎてしまうという方も多いです。
そういった方は、フィードバック面談などを定期的にもうけてもらい、自分の評価や今後のアドバイスを聞いてもらうことをオススメします。人間関係に悩みがちな方にとっても、相談の場としてオススメの配慮です。
なかには、健常者社員以上のパフォーマンスを発揮しているにもかかわらず、自分に自信がもてていない方もいます。特にそんな方にうってつけの配慮の一つと言えます。
メリット:定期的に評価を得られることで自分の頑張りの方向性が見えやすい
デメリット:人によってはアドバイスされた内容を深くとらえすぎて悩みにつながるおそれがある
ポイント②職場のキーパーソンを確立する
次に精神障害者が就活で失敗しないために抑えておきたいポイントは、職場内のキーパーソンを確立することです。この場合のキーパーソンとは、職場での業務・人間関係などの悩みを相談し合える相手を指します。おそらく多くは直属の部署の上司になると思われます。
不安な方は面接選考の段階で、「職場内で困ったときの相談役に当たる方はいますか?」と確認するようにしておきましょう。
誰が担当者となるかは、残念ながら本人から選ぶことは現実的に難しいです。そこで、ここでは私が感じた担当者に向いている方の特徴を記しておきます。就職後に、自分との接し方を担当者と相談する機会があれば参考にしてみてください。
性格も障害もひっくるめて特性と捉えてくれる人
まず向いていると感じるのは、性格も障害もその人のパーソナリティとして受け入れてくれる方ですね。
障害が由来の問題かどうかが微妙な課題であっても、精神障害者の悩みに寄り添ってくれる確率が高いからです。
よく職場担当の方から「(精神障害者の)どこからが性格で、どこからが障害なんですか?」と問われることがありますが、そういった場合は逆に注意深く見ています。担当者によって、性格が由来している問題に関しては取り合えないという方がいるからです。もちろんすべてがそういう担当者ばかりではないですし、単に興味本位での質問の場合もあります。
とはいえ、性格と障害を完全に区分するのは困難ですし、区分できたところで課題が解決するわけではありません。まず起こった課題にどのように対処していくかを、本人と一緒に向き合って考えられる人は担当者に向いていると感じます。
後回しにしない人
本人の抱えている課題に対して、迅速に対応してくれる方は担当者に向いていると感じます。
抱えている課題によっては、本人や担当者だけでは解決できない場合もあります。だからこそ、対応スピードが早ければ別の手立てを考えることもできるんです。
一見優しく、否定的ではない人であっても、初動が遅い人の場合、課題が肥大化してしまうおそれがあります。特に人間関係などは最たる例と言えるでしょう。
障害者に遠慮しすぎていない人
最後に紹介する担当者に向いている人は、精神障害者に対してもフラットに話しかけてくれる人です。
障害者の指導や声かけに自信を持てない企業担当者がいます。
— エドガワ@障害者ワークナビ管理人 (@edo_work_navi) March 30, 2021
決まって他の社員と同じような声かけで大丈夫ですと返すようにしてます。
結局、大丈夫かどうかは人によって異なるし、まず接してもらわないと検証できない。
配慮と気兼ねすることは違うよと言う話。#障害者雇用 #合理的配慮
だれでもはじめは障害者と働く経験なんて無いんです。だからこそ、歩み寄って指導や声掛けを重ねることで関係性の蓄積をしていく必要があります。
仮にそれでうまくいかなかったとしても、お互いに次への反省点として活かしていけば良いんです。
「障害があるから、あまり声掛けしすぎない方が良いかな…」と気後れしてしまう担当者は、本人の課題の見過ごしにもつながりかねないため、日ごろのコミュニケーションこそ何より重要です。
ポイント③支援機関を活用してストレス管理を外部委託する

最後に紹介する精神障害者が就活で失敗しないポイントは、支援機関を活用することです。
ここまで紹介した配慮点の伝達やキーパーソンとの関係性づくりは、精神障害者一人で行うには難しいことも多いです。
せっかく障害者雇用でチャレンジするとなれば、ぜひ支援機関を活用して、自身が抱えるおそれのある課題を相談しておきましょう。支援機関によっては、職場に介入してくれる場合もあります。支援機関については、以下の記事も参考にしてみてください。
→障害者就業・生活支援センターとは障害者雇用の何でも屋!働くを楽にするためのサービス内容を総まとめ!
→【2021年版】障害者雇用求人を探すならハローワークへ必ず登録しよう!誰も言わないメリット教えます
職場定着をしてもらうタイミングは人によって異なりますが、特にストレスを抱えやすい環境が変化する(したい)タイミングの場合は、介入してもらうことを検討しましょう。
<支援機関に職場へ介入してもらうことを検討するタイミング>
・人事異動により上司や同僚が変わり、人間関係の変化が生じたとき
・部署移動で仕事内容が変わるため、自分だけで仕事の構築ができるか不安になったとき
・長年勤めてきたことにより、給与や勤務時間などを変更してもらいたくなったとき
すべて自分で解決しようと思い悩む必要はありません。少しドライな言い方になりますが、ストレス管理というタスクを支援機関に外部委託するといったやり方も選択肢の一つです。
定着支援サービスを実施している転職サービス、訓練機関のリンクを貼っておきますので、興味がある方は利用を検討してみてください。



まとめ
・精神障害者の就職増加率は高く、準備・対策をしていれば長く働くことができる
・通院・服薬配慮以外の配慮点もしっかり定めておき、不安・不満を取り除くようにする
・職場内のキーパーソンと良好な関係性を築いておき、トラブルにも対応できるようにする
・支援機関を活用して、環境変化に対応できるようにしておく
いかがでしたでしょうか?
やらなければならないことが多いと感じるかもしれませんが、急がば回れという言葉もある通り、
結果的には長く働き続けるために無駄なことはありません。悔いのない就職活動を送ってくださいね。
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