障害者を雇用をしているんですが、なかなか定着できずに退職が相次いでいます。なんでなのかいまいち原因がつかめません…
障害者が職場に定着するかどうかは企業担当者の接し方が原因の大半を占めると言っても過言じゃありませんよ。
障害者が職場に定着するかどうかは、企業担当者の対応による部分が非常に大きいです。もし障害者の退職が相次いでいるといった場合、障害者への接し方に問題がある可能性大です!
今回は、何十社もの企業に訪問してきた経験のある筆者が、企業担当者の抑えておきたい鉄則をまとめてみました。
自分が守れているかどうかを必ずチェックしておきましょう!
この記事を見れば知ることができること
- なぜ障害者を雇用するかの本質について
- 障害者がどういったことに気にして働いているか
- 基本的且つ重要な障害者との接し方
それでは一つずつ見ていきましょう。
目次
鉄則① 法定雇用率のために雇用しているとは思わないこと

障害者雇用を行う上で押さえておくべき第一の鉄則は、障害者を法定雇用率のために雇用していると思わないことです。
ええ!?だって障害者雇用するのは法定雇用率のためって上司に口酸っぱく言われてきましたよ!?
それは表面的な理解に過ぎません。そもそもなぜ法定雇用率というものがあるか考えるのが大事です。
民間企業は企業規模に応じて一定数の障害者を雇用しなければなりません。令和3年9月時点では、常用雇用労働者45.5人以上の民間企業は全体の2.3%以上の障害者を雇用する必要があります。

…と、ここまでは障害者雇用の採用担当者ならだれでも知っていることです。
それでは、なぜ法定雇用率というものがあるのかを口で説明することができるでしょうか?
ひとことで言えば、「共生社会」の実現のためです。元々、障害者雇用は障害者雇用促進法に位置付けられた制度です。障害者雇用促進法は、共生社会の実現を目的としています。
共生社会は、以下のように規定されています。
「共生社会」とは、これまで必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障害者等が、積極的に参加・貢献していくことができる社会である。それは、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会である。このような社会を目指すことは、我が国において最も積極的に取り組むべき重要な課題である。
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所
つまり、障害者雇用は障害者が積極的に社会参加できることを促すこと、健常・障害者問わず人格や個性を尊重・支え合う制度と言えます。
う~ん、なんか高尚なこと言われている気がします。理念が大事なのはわかりますが、企業としてどのようにメリットがあるんでしょうか?
障害者の積極的な社会参加は企業側にも大きなメリットがあるんですよ。
障害者を雇用するメリットは以下の通りです。
<障害者雇用を行うメリット>
- 多様性を認める社風になりやすい
障害者がいる環境が当たりまえになれば、障害の有り無しを問わず、多様な人材を受け入れる雰囲気になりやすいです。結果的に社風の改善にもつながります。
- 人材育成ノウハウが高まる
障害者を雇い入れることで、相手に合わせた臨機応変な指導経験を積むことができます。障害者と言っても同じ人間ですので、一度積んだ指導経験は、健常者の指導にも活かすことができます。
- 戦力として活躍してもらえる
障害の特性にマッチングした仕事を任せることで、健常者社員以上のパフォーマンスを期待できます。仕事に就くことに人一倍モチベーションの高い方も多い点も特徴です。
このように、数多くのメリットがあることがわかります。
話を戻しますが、「障害者雇用を法定雇用率を満たすため」と捉えてしまうと、上記の障害者雇用の本質・メリットを見失ってしまうリスクが高まります。目先の数字にとらわれてしまってはもったいないですよね。
障害者雇用を行う企業側のメリットは以下の記事でも取り上げてみます。ぜひ見てみてください。
→【企業向け】障害者雇用をするメリット・しないデメリットを紹介【知らなきゃマズイです】
また、法定雇用率だけにとらわれると、障害者雇用を義務的に行う姿勢が前面に出がちになります。義務感に駆られて仕方なく雇用している様子は、みなさんが思っている以上に障害者や支援者から見て丸わかりです。
障害者は自分がどう見られているかに人一倍敏感な方が多いです。表に出していないつもりでも、看破されないとは思わない方が良いです。
鉄則② 否定から入らない

障害者雇用をする際の2番目の鉄則は、否定から入らないことです。
あ、これはわかります。否定から入られると誰しもモチベーション落ちますよね。
そのとおりですね。ただ、障害者のできないことを目にした時も同じように思えるでしょうか?
障害者雇用の場合、健常者には想像もつかないようなトラブルが起こることがあります。
たとえば、知的障害者の場合、過度にミスを恐れてバレがちなウソをついてしまう方がいます。仕事への慣れと関係ない課題であることから、つい頭ごなしに叱りがちです。
ましてや、「ウソをつく」という行動自体、社会人としてしてはいけないため、なおさら突っ込みたくなってしまうでしょう。
しかし、障害者雇用においては、反射的に叱るのではなく、原因を探ることがとても重要です。
そもそもなぜウソをついたのか?
ウソをつかざるを得ない環境・人的な問題があったのか?
本人はウソをついたことをどう認識しているのか?
原因ひとつとっても、数多くのアプローチからの質問が考えられますね。
今回はわかりやすく「ウソをつく」という行動を例にしましたが、頭ごなしに否定から入ってしまうと、障害者側が口を閉ざして原因を追究することができない恐れがあります。
問題の原因が分かれば、環境改善につながる他、障害者の特性の理解をすることができます。こうした課題発生→原因追及→環境改善のサイクルが障害者の職場定着につながります。
健常者同様、はじめから完璧な障害者なんていいません。職場での問題は障害者のことを知れるチャンスです。頭ごなしに否定することでチャンスをつぶさないようにしましょう。
鉄則③ 手のひら返しをしない

障害者雇用をする際の3番目の鉄則は、手のひら返しをしないことです。
これは私が支援をしていて日々痛感することですが、問題が発生していない時は企業担当者は得てして”良い人”です。障害者を雇用することへの展望を語る人もいれば、健常者以上に働いているとべた褒めする人も少なくありません。
ところが問題が発生した途端、態度が豹変する担当者がいます。「辞めたいなら辞めてもらっていい」と急にドライな対応する人や、障害者へのグチの割合が急に高くなる人など様々です。
余裕がないときに人の本性は出ると言いますが、まさにそれです。 障害者雇用の経験の有無というより、その担当者自身の人柄によって接し方に差が出るように感じます。
こうした手のひら返しをする企業担当者の場合、問題に取り合ってくれなくなりがちため、問題の肥大化→障害者の退職につながるリスクが高まります。
発生した問題によっては企業に全く非が無いということもあります。「問題を起こさないような良い人材だけ雇用したい」という考えであっても、営利組織としては間違っていません。しかし、そもそも働く中で大きな問題を起こさない人間の方が少数です。
雇用した以上は企業にも育成・雇用管理の義務があります。人を雇うということは、リスクも織り込む必要があります。
鉄則④ 約束したことは守る

障害者雇用をする際の4番目の鉄則は、約束したことは守ることです。
障害者雇用における「約束」とは、様々あるものの、代表的なものとしては配慮事項が挙げられます。
- 体調に無理のないように、時短勤務ができるように社内のルールをチェックする
- 定期的な業務振り返りの場をもうけるため、面談の場を定期的にもうける
上記のような取り交わしを障害者とする場合は、必ずいつまでに何をするかを明確にしておきましょう。
もし明確な期限を決めずになあなあにしていた場合、そのつもりが無くても障害者側は「約束を破られた」、「後回しにされた」という感覚に陥るリスクがあります。
企業担当者は障害者雇用以外の本来業務がある場合がほとんどです。そのため、慮事項などの取り交わしなどの障害者との約束が付随的な業務になりがちになります。
とはいえ、一度約束を取り交わしたのであれば、遵守する姿勢を見せることはとても重要です。もし配慮事項を完全に守れなかったとしても、自分のために動いてくれたという姿勢は障害者側にもわかります。
もし予定より遅れがちになるのであれば、事情を伝えて一声かけておけば、同じ社員である以上、事情を理解してくれる場合がほとんどです。
こうしたコミュニケーションの一つ一つが信頼関係の構築には不可欠です。
障害者が定着している職場では、細かな約束をしっかり守る姿勢が文化として根付いている場合がほとんどです。「約束したことは守る」、障害者を雇用する上で大切にしたい姿勢です。
結局のところ知識よりも向き合い方
ここまで障害者を雇用する上での鉄則をまとめてきました。
見ればわかるかと思いますが、実は一つとして専門知識は必要ないんです。そう、障害者を雇用する上で重要なのは知識よりも向き合い方です。
同じ人として誠実な向き合い方をしていれば、障害者は企業担当者を信頼できる人として認識してくれます。企業担当者側も、障害者と接することへの自信がつくことでしょう。
この信頼関係が障害者の職場定着につながります。障害者が自然と定着する職場環境になっていけば、過度に退職することに恐れる必要が無いため、自然と法定雇用率も満たしやすくなります。
社員同士の信頼関係が構築されており、退職する人が少ない…これってホワイト企業の図式に似ていませんか?
結局のところ、社員を大切にしている社風であれば、目先の数字に惑わされることはありません。全体の社風は企業担当者一人が同行できる問題ではないかもしれません。
しかし、障害者と企業担当者という個人間のやり取りであれば、心掛け一つで変えることができます。障害の有無こそあれど、同じ仲間として誠実な向き合い方を心掛けましょう。
困ったら支援機関を活用してみましょう
障害者を雇用する上で大切なことがわかった気がします。ただ、一人で出来るのかどうしても不安が残ります…
もし障害者の雇用管理や雇い入れで不安がある方は障害者の就労支援機関に相談してみてください♪
あれやこれやと書いてきましたが、企業担当者も一人の人には変わりありません。障害者雇用に不安を抱かれている方も少なくないと思います。
そんな方は、ぜひ障害者の支援機関を活用してみてください。
例として、地域の障害者就業・生活支援センターでは、雇い入れの段階から、企業の業務内容切り出しから実習のコーディネートまでサポートをしてくれます。障害者の雇用後は定期的な職場訪問などを通して職場定着の手助けをしてくれます。
障害者就業・生活支援センターについては、以下の記事を参考にしてみてください。
→障害者就業・生活支援センターとは障害者雇用の何でも屋!働くを楽にするためのサービス内容を総まとめ!
障害者にも同じことを言えますが、一人で悩まずに、周りの社会資源を活用しながら雇用を進めていってくださることを願っております。
まとめ
- 障害者を雇用する本質は多様な人材を受け入れることによって互いに成長していくため
- 障害者雇用は、否定から入らない、手のひら返しをしないなど、知識よりも向き合い方が重要
- 雇用管理に迷ったら地域の支援機関を活用する
いかがでしたでしょうか?
障害者雇用は不安もあるかもしれません。しかし、実はみなさんが思っている以上に奥が深く、数多くのメリットが存在しています。
今回の記事を参考に、ぜひ職場での雇用管理に活かしてみてください。
コメント