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【支援者必見】SSTを就労支援で活用して得られるメリットを紹介!

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支援業務に携わる中で、SSTについてよく見聞きします。支援にも活かせると聞くんですが、具体的にどういうメリットがあるんですか?

SSTは障害者支援に携わる方であれば、知っておいて損はない専門知識です。特に就労支援ではSSTの考え方はとても重宝しますよ♪

SST(ソーシャルスキル・トレーニング) は社会生活技能訓練という名で呼ばれる、訓練プログラムの一つです。医療機関のデイケア発祥のプログラムですが、今では就労移行などをはじめとした様々な福祉事業所で活用されています。

今回は、現役の就労支援員である筆者(エドガワ)が、SSTを就労支援で活用することで得られる考え方・メリットを紹介していきます。

ぜひ最後までご覧ください。

この記事を見れば知ることができること

  • SSTの概要
  • SSTを就労支援で活用して得られるメリット
  • 一対一の面談で行うSST(個別SST)のやり方

SSTとは?

SST(ソーシャルスキル・トレーニング)は社会生活を営む上で必要なスキルを獲得するための訓練プログラムです。

おもに障害者の通所サービス(デイケア、就労移行支援事業所)などで用いられることがほとんどです。障害者の場合、障害によって本来獲得すべき社会生活技能が失われている(獲得タイミングを逃してしまった)という方は少なくありません。

たとえば、多くの人が当たり前にやっているだろう挨拶一つとっても、過去に引きこもり経験のある発達障害者にとってはとてつもなく高いハードルになるかもしれません。

どんな言葉で使えば良いのか?どんなタイミングで言えばいいのか?礼もした方が良いのか?声の大きさはどれくらいがよいのか?など、挨拶という行為だけでも、いくつもの動作の判断が必要になります。

SSTでは、こうした実際の日常生活場面を切り取り、何度もグループでロールプレイを行うことで、社会生活技能を獲得していくことを目的としています。

SSTの具体的なテーマ設定や集団で行うロールプレイのやり方については、以下の記事で解説しています。一度見てから以降の説明を見た方が理解度も深くなります。ぜひご覧ください。

【当事者向け】SST(ソーシャルスキルズ・トレーニング)の効果を解説!【就活・仕事にも役立つ!】

SSTを就労支援で活用して支援員が得られるメリット

それでは、SSTを就労支援で活用することで得られるメリットを紹介していきます。

SSTってグループで行う訓練プログラムですよね?基本的に就労支援って一対一だから、あまりSSTと関係ない気がするんですけど…

甘い!SSTは訓練プログラムのやり方を学んで終わりではありません。SSTの真骨頂は、支援員の支援へのアプローチを変革させる部分にあります。

相談者と信頼関係を構築しやすくなる

まず、SSTを活用することで支援員が得られるメリットは、相談者と信頼関係を構築しやすくなることです。

SSTはグループで輪になって、特定のテーマを決めて取り組むプログラムです。参加者となる障害者が知りたいこと、身につけたいことに応じて、テーマを決定します。

その際、普段の行動や、参加者からのアドバイスを基にした行動をロールプレイで示してもらうパートがあります。SSTでは原則、ロールプレイをしてもらった障害者には良いところを誉めてあげるのが大原則のルールとして存在しています。

つまり、プログラムの中で、常に良いとこ探しのアンテナを張り続けなければなりません。

こうした良いとこ探しの思考によって、相談者の自信をつけやすくなります。自信をつけさせてくれた相手には、少なくとも悪い印象は覚えませんよね。

結果的に、SSTの良いとこ探しが相談者との信頼関係を構築させることにつながるというメカニズムとなります。

支援慣れは相談者への無意識のマウントを生み出す

相談者の良いとこ探しは、簡単そうに見えて実はとっても難しいんです。それはなぜか?

ズバリ、良いところをフィードバックするよりも、支援経験を基にしたアドバイスを優先したくなるからです。

支援員をしている人は多かれ少なかれ、人の助けになりたいと思って仕事をしています。相談者にアドバイスをしたいという欲求は誰しも持っているものです。

アドバイス自体は悪いことではありません。むしろ、アドバイスを求めている相談者の方が多いと言っても良いくらいです。

問題なのは、本人の良いところ(積み上げてきたこと)をないがしろにして、否定(ダメな理由)から入るアドバイスです。仮に正論であっても、否定から入られては相談者への不信感にもつながりかねません。

恐ろしいことに、こうした無意識のマウントは支援経験が豊富な人ほど陥りやすいです。支援経験が積み重なるほど、多くの失敗例も目にしているため、良かれと思っての強めのアドバイスの比率が多くなりがちです。

何を隠そう、私自身も良かれと思ってのアドバイスが多すぎることで、クレームにつながったことがあります…

まずは肯定的なフィードバックをすることで、相談者と信頼関係をきずく。歩調が合ったタイミングで初めてアドバイスをすることで、本当の意味での支援になります。こうした支援を生み出すためにも、SSTの良いとこ探しは支援者必須のスキルと言っても良いくらいです。

企業への助言力が向上する

次に、SSTを活用することで支援員が得られるメリットは、企業への助言力が向上することです。

先ほど述べた、良いとこ探しの思考を企業支援に流用することで、職場の強みを発見しやすくなります。結果的に障害者雇用を行う企業への助言力が向上しやすくなるといった具合です。

これだけで終わっては難なので、もう少し補足したいと思います。

就労支援を通して、企業訪問を行うのは日常茶飯事という支援員も多いと思います。障害者雇用を行う企業担当者の方には、温厚で障害者想いの方もいれば、残念ながらそうでない方もいます。

配慮事項への対応を後回しにしがちだったり、トラブルが発生するや否や、雇用継続をしたがらなくなったりと様々です。

こうした企業に対応するには、問題の早期発見が重要です。早めに障害者と企業の強みを関連付けて問題に対処していくことができれば理想です。

言い方は悪いですが、問題に取り合ってもらいにくい企業は、「面倒なことを避けたい」という姿勢が顕著だったりします。この気持ちを逆手に取り、早めに問題に対応する実績をつめれば、「支援者の助言を聞いた方が面倒なケースになりにくい」という気持ちを根付かせることも可能です。

もちろん理想通りにいかないことの方が多いですが、SSTの良いとこ探しは職場訪問時の早期問題解決・リスクヘッジにつながることは確かです。

「問題を後回しにしない」が鉄則です。環境上の強みを早くに見つけていればいる分だけ、問題が肥大化する前に企業と調整しやすくなりますよ。

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一対一の面談で行うSST(個別SST)のやり方

次に、一対一の面談で活用できる個別SSTのやり方を紹介します。

え?SSTって個別でできるものもあるの?

厳密には、面談の場で簡易的なSSTを再現していくという感じですね。

個別SSTは、SST普及協会認定講師である土屋徹先生の研修を受けた際に教わった方法です。

個別SSTは、現状していること、その時点でできていることや、さらに向上できる部分をフィードバックしていくSSTの手法を面談で再現していくものです。

興味がある方は、土屋先生の書籍のリンクを貼っておきますので、見てみてくださいね。

土屋先生のプロフィールについてはコチラを参照ください。

①個別SSTシートを用意する

まずは個別SSTに使うシートを用意します。

個別SSTはシートを基にして、困っていることを明らかにして今後の方向性を導き出していく手法です。

今回は枠線・項目を事前に書いていますが、白紙の紙とペンさえあれば、すぐに個別SSTは開始できます。もし余裕がなければ、画像のように紙に十字線を引いておくだけでも構いません。

②相談したいことを書く

個別SSTで最初に行うことは、相談したいこと(困っていること)を書くことです。相談者の相談したいことですので、支援者が促すのではなく、あくまで本人から発言してもらうようにしましょう。

③今取り組んでいることを書く

次に①で書いた困っていることに対して、現在取り組んでいることを書いてもらいます。

行動にまで移っていなくても問題ありません。心構えをしているというレベルであっても、困っていることに対しての行動・思考であれば何でも構いません。否定をせずに自由に答えを出してもらいましょう。

④自分で出来ていると思うことを書く

次に自分で出来ていると思うことを書いていきます。

謙虚な人ほど、出来ていると思えることが出づらいかもしれません。考えあぐねるようであれば、支援者から「例えばこういう時はどうしてた?」など、助け舟を出して考えを出しやすくしてあげましょう。

成果に現れていないことであっても、出来ていると思うことでさえあればどんどん出していきましょう。

⑤もっと良くなると思うことを出していく

次にもっと良くなるアイデアを出し合っていきます。

ブレインストーミング形式で、相談者・支援者双方でどんどんアイデアを出していきましょう。

ポイントは現実的でないことであっても、案を出し合っていくことです。楽しみながら話し合えるとアイデアも出やすくなるでしょう。

⑥今後取り組んでみること

最後に今後取り組んでみることをまとめていきます。

③で挙がったアイデアの内、どれを取り入れるかを相談者に考えてもらいます。

支援者の意見ではなく、相談者自身で選び取ってもらうことが大事です。取り組む案は一つに絞り込む必要は有りません。複数取り入れられそうであれば、2つ以上選んでも問題ないです。

まとめ

  • SSTは支援者の支援へのアプローチを変革することができる手法
  • SSTは相談者と信頼関係を構築しやすくなる、企業への助言力が上がるというメリットがある
  • 個別SSTを通して、一対一の面談でSSTを実施することができる

いかがでしたでしょうか?

SSTはやり方次第で、支援者の支援スキルを大きく向上させることができます。特に経験者で支援への考えが固着している人ほど、良いカンフル剤になります。ぜひ各事業所にてSSTのやり方を取り入れてみてくださいね。

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