今度、通っている就労移行支援事業所でSST(ソーシャルスキル・トレーニング)っていうのをやることになったんだ。SSTってどんなことするの?何のためにするの?
SST(ソーシャルスキル・トレーニング) は社会生活で必要な能力を、実際のロールプレイを通して体得していくプログラムです。医療機関のデイケアなどで行われるものが主流ですね。
SST(ソーシャルスキル・トレーニング) は社会生活技能訓練という名で呼ばれる、訓練プログラムの一つです。医療機関のデイケア発祥のプログラムですが、今では就労移行などをはじめとした様々な福祉事業所で活用されています。
今回は、SSTがどういった場面で必要なのか、行うメリットは何かなど、幅広く解説していきます。
ぜひ最後までご覧ください。
この記事を見れば知ることができること
- SSTの概要(行う理由、取り扱うテーマなど)
- SSTのやり方
- SSTを仕事・就活の場面で役立たせる方法
SSTとは?

SST(ソーシャルスキル・トレーニング)は社会生活を営む上で必要なスキルを獲得するための訓練プログラムです。
おもに障害者の通所サービス(デイケア、就労移行支援事業所)などで用いられることがほとんどです。障害者の場合、障害によって本来獲得すべき社会生活技能が失われている(獲得タイミングを逃してしまった)という方は少なくありません。
たとえば、多くの人が当たり前にやっているだろう挨拶一つとっても、過去に引きこもり経験のある発達障害者にとってはとてつもなく高いハードルになるかもしれません。
どんな言葉で使えば良いのか?どんなタイミングで言えばいいのか?礼もした方が良いのか?声の大きさはどれくらいがよいのか?など、挨拶という行為だけでも、いくつもの動作の判断が必要になります。
SSTでは、こうした実際の日常生活場面を切り取り、何度もグループでロールプレイを行うことで、社会生活技能を獲得していくことを目的としています。
「プログラムを通した心の安定」という趣旨が一致していることから、精神科デイケアとSSTは親和性ピッタリと言えますね。
SSTはなぜ必要なのか
次に、SSTがなぜ必要なのかを考えていきましょう。
え?社会生活を送る上でのスキルを獲得するためじゃないの?
なぜスキルを獲得する必要があるのか深掘りして、より目的意識を明確にしていきましょう♪
コミュニケーションスキルの習得
まず一つ目のSSTを行う理由はコミュニケーションスキルの習得です。
さきほど、挨拶を例に挙げましたが、コミュニケーションスキルは日常生活を送る上で非常に大事なスキルです。人に声をかけられるという技能を獲得することで、人と相談して不安やストレスの解消につなげることができます。
また自分を知ってもらうことで、自身が所属しているコミュニティの輪を広げることができます。
人生を活き活きと過ごす足掛かりを作る上で、SSTはとても効果的にはたらきます。
自分の障害特性を知ることができる
次のSSTを行う理由は、病気や障害特性についての知識を深めることです。
精神科デイケアではグループワーク形式で障害について考え合ったり、自分の特性をあらわしたオリジナルの病名を考え合うといったユニークなプログラムもあります。
こうしたプログラムを通して正しい障害に関する知識を身に着けることができるだけでなく、疾病の再発防止につなげることができます。
地域生活を送るため
最後のSSTを送る理由は地域生活を送るためです。
社会生活とひとくちに言っても、社会生活を送る上で必要なスキルは山ほどあります。金銭管理やら炊事・洗濯の仕方、公共料金の支払い、ご近所づきあい…などなど、言い出したらきりがありません。
SSTでは、これらの日常生活場面でどのように対応すればよいかもテーマとして取り扱います。
ゆくゆくはプログラムを通して、地域で自立した生活を送ることをゴールの一つとしてプログラムを実施していきます。
支援者のスキル向上のため
SSTは支援者のスキル向上に役立ちます。
SSTの良い点をフィードバックする工程は、支援者が相談者の良いとこ探しをすることができるという観点で、面談時に信頼関係を構築しやすくなるというメリットがあります。
支援者向けにSST記事を作成したので、支援者をしている方、もしくは支援に興味を持っている方は参考にしてみてください。
→【支援者必見】SSTを就労支援で活用して得られるメリットを紹介!
SSTで取り扱うテーマ

次にSSTで取り扱うテーマを紹介します。
SSTはグループで輪になって、特定のテーマを決めて取り組むプログラムです。参加者となる障害者が知りたいこと、身につけたいことに応じて、テーマを決定します。
つまり、明確なルールは存在せず、参加者に応じてテーマは無限に存在すると言っても過言ではありません。とはいえ、よく扱われるテーマの傾向は有るため、ここでは一例を紹介していきます。
コミュニケーションスキル系テーマ
- 挨拶の仕方
- 遅刻・早退をする時の連絡の仕方
- 飲み会の上手な断り方
- 体調不良になった時の申し出の仕方
心理教育系テーマ
- 服薬管理
- 怠薬を防ぐ方法
- 主治医とのやり取りのコツ
- 症状を悪化させないコツ
地域生活系テーマ
- 金銭管理方法
- SNSとのうまい付き合い方
- 知っておくと便利な社会資源
- スマホ依存を防ぐ方法
SSTのやり方

さて、それではSSTの具体的なやり方を紹介していきます。
SSTはやり方自体も各事業所のローカルルールが存在するため、一概にコレといった方法は存在しません。ここでは、精神科デイケアで行われる一番オーソドックスなパターンのSSTのやり方を紹介していきます。
①リーダー・サブリーダーを決める
まずはリーダー・サブリーダーを決めていきます。リーダーは全体の進行、サブリーダーはテーマ案などの板書、ロールプレイの相手役などを担当します。
実は各種進行補助を行うサブリーダーの役割がとても重要です。SSTはサブリーダーのサポートによって、質が大きく左右されると言われています。
これらの役割は、事業所の職員が担うこともありますが、障害者側が担っても問題ありません。
②テーマを決める
次にSSTで取り上げるテーマを決めていきます。
その日の参加者に、どんなことを知りたいかなどをヒアリングしていき、テーマを決めていきます。どうしても意見が出ない場合はリーダーやサブリーダーがテーマを決めていっても構いません。
挙がったテーマ案はサブリーダーが板書していき、全体で一つのテーマに絞っていきます。
③ロールプレイをしてもらう
次に、参加者が普段どのようにその物事に対応しているかロールプレイで示してもらいます。
多くは決まったテーマの発案者がロールプレイを担当することがほとんどです。具体的な場面設定は、リーダー・サブリーダーが案を出してあげることでスムーズに進行できます。
たとえば、「遅刻早退がうまくできない」というテーマの場合、自宅から携帯から連絡をかけるといった場面設定を行うといった具合です。ロールプレイで相手役が必要な場合は、サブリーダーがその役割を担います。
ロールプレイを行った参加者に対しては、拍手や言葉がけなどでロールプレイをしてもらったことの労いをするようにしましょう。
④プラスのフィードバックする
次に、③のロールプレイで良かった点を参加者から挙げてもらいます。
大事なことは、マイナスなことは言わず、プラスのフィードバックをしてもらうことです。フィードバック内容はサブリーダーが板書にまとめていきます。
⑤ブラッシュアップできるポイントを話し合う
続いて、行ってもらったロールプレイに対し、さらに良くするためにはどうしたらよいか?という観点で参加者から意見をもらいます。
挙がった内容は板書にまとめていきます。
⑥取り入れるポイントを選んでもらう
次に⑤で挙がったポイントの中から、ロールプレイを行った参加者に、実際に取り入れられそうなものを選んでもらいます。
無理なく、自分ができそうなことをピックアップすることが大事です。
⑦再度ロールプレイをする
次に、⑥で挙がったポイントを取り入れながら、再度ロールプレイを行ってもらいます。
今回の例で言えば、遅刻早退連絡の際に「大変申し訳ないのですが…」というクッション言葉を挟んで、ロールプレイを新たにやってみる…といった感じです。
⑧感想を話してもらう
ロールプレイを行った方やほかの参加者から、2度目のロールプレイの感想を発表してもらいます。
プラスの感想を引き出していくことで、今後の日常生活に組み入れやすくなります。
⑨次回のテーマを決める
最後に次回のテーマを参加者から募り、終了となります。今回行ったテーマを次回に持ち越して、別の参加者に行ってもらうといったやり方もあります。
テーマを無理にひねくりだす必要はないため、その場の状況に合わせてテーマを決めるかどうかを考えていきましょう。
仕事にも役立つJST(ジョブスキル・トレーニング)のやり方
実はSSTは仕事や就活をする際にも役立てることができます。
理屈は簡単、SSTで取り上げる日常生活場面を、就業上の場面に置き換えさえすればいいんです。
たとえば、普段関わりのない上司への資料完成報告(報連相の練習)やミスをした時の謝罪の仕方などです。
実際の就業上の場面を取り上げるため、よりリアルなロールプレイが期待できます。
こうした就業場面を取り上げたSSTのことをJST(ジョブスキル・トレーニング)と呼び、就労移行支援事業所などの就労訓練で日々活用されています。
就労移行支援事業所の役割については、以下の記事も参考にしてみてください。
→就労移行支援事業所とは何か?必要でないと感じるあなたほど必要なサービスです。
ロールプレイは課題を可視化・共有しやすいため、相談者・支援者どちらにとってもメリットが大きいです。
まとめ
- SSTは社会生活に必要な技能を獲得するための訓練プログラム
- SSTはコミュニケーションスキル以外にも、疾病理解や地域生活を送る上での必要な技能の獲得が見込める
- 就業場面に置き換えることで、就業上の技能獲得を行うこともできる
いかがでしたでしょうか?
SSTは応用次第で、様々な場面で活用できるプログラムです。もし興味があるという方がいれば、すでに通っているもしくは通おうとしている事業所でのSSTの実施を提案してみてはいかがでしょうか?
今回の記事を見せてもらっても構いませんので、ぜひ参考にしてみてください♪
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