SNSで就労移行支援事業所は使わない方がいいってコメント見たけれど本当なの?
何をもって消極的なコメントになっているかにもよりますね。事実のものもあればそうでないものもあるというのが答えになります。
就労移行支援事業所は近年、急激に数を増やし始めています。株式会社を中心として参入が進んでおり、選択肢は増えています。その分、「就労移行支援事業所の実態ってどうなの?」と気になる方は多いと思います。
今回は就労支援センター職員の筆者が第三者目線で就労移行支援事業所の実態を取り上げてみました。「そもそも就労移行支援事業所ってなに?」という方は、以下の記事を見てみてくださいね。
→就労移行支援事業所とは何か?必要でないと感じるあなたほど必要なサービスです。
この記事を見れば知ることができること
- 就労移行支援事業所の平均通所期間などの数量的データ
- 就労移行支援事業所にはどんな支援員や利用者がいるか
- ネット上での就労移行支援事業所の口コミ
それでは実際に見てみましょう。
目次
数字から見る就労移行支援事業所の実態
まずは、通所する期間や就職率といった数量的なデータから実態を見ていきます。
平均通所期間

人材大手会社パーソルが運営している就労移行支援事業所のミラトレによると、平均通所期間は平均8,9か月とされています。
長いととるか短いととるかは人にもよりますが、実力のある人であっても半年以上通う人は少なくありません。それは事業所内でのアセスメントが関係しています。
障害者雇用の場合、体調や能力面での配慮点を整理することが必要不可欠です。配慮点を整理することで、はじめて障害者雇用のメリットをフル活用できます。
こうした配慮点は一定期間通所して、プログラムや企業実習を通して、はじめて明確化することができます。ケースにもよりますが、予定よりも通所期間が間延びしてしまうといったメカニズムになっています。
そうした実態を把握していないと、いつから就活をはじめるかという点で就労移行支援事業所側との食い違いが生まれかねません。

よくあるのが、「○か月で就職を希望していたのに、いつまで経っても就活させてもらえなかった!」というクレームですね。
往々にして、事業所側の意図が伝わりきっていないケースがほとんどです。
じゃあ通所期間のトラブルは障害者側の問題ってこと?
いいえ、受け入れる事業所側の問題も見過ごせません。
もちろん障害者側もこうした実態は把握しておくに越したことはありません。しかしもっと重要なのは、実態を知らない障害者に対して、利用開始前の段階で支援員がしっかり説明をしておくことです。
支援者は、希望通りにならないこともあることを実例と共に伝えたうえで、利用するかを自己決定してもらうことが必要です。
最近は福祉分野とは異なる事業から新規参入する就労移行支援事業所も少なくありません。市場の活発化は大いに結構です。しかし、利用者の受け入れること(利益)を優先するがあまり、解釈の食い違いのリスクを把握している職員が少なくなっていないかは私自身も懸念しています。
利用者数
それでは気になる就職率を見ていきましょう。令和元年社会福祉施設等調査の概況によると、令和元年9月時点の就労移行支援事業所利用者数は、40,062人となっています。
さらに過去のデータは以下のグラフの通りです。
平成30年時点で35,442人となっており、わずか2年の間で約5,000人もの上昇幅を見せていることがわかります。
就労移行支援事業所から就職するという選択肢は、近年ますます一般的なものになっています。
企業側もそのことを承知しているため、障害者雇用であれば通所期間は「しっかり訓練を積み重ねていた期間」として好意的に評価してくれることがほとんどです。
むしろ、体調不良で離職してすぐに就活に移る人よりも、企業側に安心感を持って受け入れてくれる場合もあります。
通所期間は履歴のブランクになると思っていたけれど、そんなに不安にならなくて良いんですね!
その通り!ただし、障害をクローズにして就活する場合は別です。自分がどういう就活をしたいかで選択しましょう!
人から見る就労移行支援事業所の実態
それでは次に、就労移行支援事業所の支援員や利用者の実態を見ていきましょう。
支援員

就労移行支援事業所ではどんな支援員が自分たちに関わるかは知りたいところですよね。
従来は、社会福祉士などの国家資格を保持する福祉畑の職員も数多く存在していました。現在も福祉業界の経験者は多いですが、以前よりも他業界経験の支援員が増えてきたように思います。
上記のトレンドは良い傾向もありますが、反面、利用者にデメリットが生じる場合があります。
メリットとしては、他業界経験を活かした多様なアドバイスをもらえること、訓練プログラムに幅が出ることです。訓練プログラムを例にすると、プログラミングを学習できる就労移行支援事業所の増加が挙げられます。
デメリットは、悪い意味でシステム化されてしまうことが挙げられます。
他業界からの参入が増えるということは、障害者に初めて関わる支援員も増えるということです。自分たちの見解・常識を障害者側に当て込みすぎるリスクが高まるという言い方もできるでしょうか。
説得させることと納得してもらうことは当然異なります。見学時には、支援員の話し方はもちろん、聞きかたもしっかり観察しておきましょう。具体的には、目を見て話してくれているか、話をさえぎっていないかは要チェックです。
利用者

次に利用者の実態を見ていきます。
事業所によっては利用者同士でグループワークをするプログラムがあるため、どんな利用者がいるかは知っておきたいところです。
利用者にどんな人がいるかは、その就労移行支援事業所がオールラウンド型か障害特化型かで大きく異なります。オールラウンド型は利用者の障害種別を問わずに広く受け入れている事業所です。一番オーソドックスな形と言えます。
障害特化型は特定の障害種別に特化した支援やプログラムを提供している事業所です。知的障害特化型や精神障害特化型など、障害種別ごとに区分が分かれています。
パッと見ると障害特化型の方がなじみやすそうだなぁ…
自分に合った支援をしてもらいたいという方はその方が良いかもしれませんね。
障害特化型の方が、支援員の専門知識が深い場合が多いため、安心して通所がしやすいメリットがあります。ただ、忘れてはいけないのが、就職したら健常者や違う障害種別の障害者の中に飛び込まなければならないという点です。
結局のところ、社会に出ると自分に合わない人ともかかわる可能性はゼロにはできません。そのため、長い目で見ると多種多様な方と関われるオールラウンド型の方が良いという見方もできます。
コミュニケーション能力を磨きたいか、安定して通所できる体力を身に着けたいかによって、どちらに通所すべきはよく考えてみましょう。
就労移行支援事業所の種類は、以下の記事も参考にしてみてください。
→【2021年版】本当におすすめの就労移行支援事業所3選【現役支援員が解説】


ネットの口コミから見る就労移行支援事業所の実態

最後に、SNSに投稿されている就労移行支援事業所についてのコメントを取り上げます。実際のところはどうなのかを解説付きで紹介します。
就労移行支援は一生に一度しか使えないから、安易に決めるなってのはすじなんだけど、その子のピークがいつくるかは、その子によるからなー。「今」かもしれないでしょ?とりあえずB型にしといてって言うほど空きに余裕ないし。成長速度は子供によるのに一生に一度だけってのはどうなのよ?ともね。
— hirosachiya (@hirosachiya) March 2, 2021
就労移行は2年間の通所期間という制限がもうけられる点にネックを感じる方が多いですね。ただ、1年の延長に加え、コロナの特例でさらに1年延長してもらえるケースもあります。
また、自治体によって通所期間を使い切った後でも再支給してもらえる場合もあります。そのため、就労移行支援事業所は「一生に一度しか使えない」ということではありません。ご安心を。
就労移行支援っつったって頑張っても繋がる仕事は短時間のパートかアルバイト。ひどいのになれば数ヶ月だけの短期間パート。それでも利用者の障害者に「働けることの喜び!嬉しさ!」って押し付けてくるからね。そんなおままごとみたいな労働じゃ自立しあ生活なんて出来ないことは決して教えない。
— とぅーぽん@福岡 パニ障 G (@namapo_seikatsu) September 28, 2020
就職できる会社の就業条件についてのコメントですね。これに関しては、就労移行支援事業所というより、障害者雇用全般の課題と感じます。
障害者雇用は時給制でパートからスタートの会社も多いのがネックとして挙げられます。ただ、障害者雇用であっても高い就業条件の会社も存在しています。
参考:【2021年版】障害者雇用でおすすめな企業5選【本当のホワイト企業はここだ!支援員目線で解説】
もちろんハイクラスな企業に就職するには実力を兼ね備えていることが前提です。最終的にどういった条件の会社に就職したいか、そのギャップをどう埋めるかは支援員と日頃から相談していくことが大事です。
障害者が就労移行利用時に多くが経験する「実習」はどうにかならないんだろうか。
— すぎ@ASD (@su08a) October 29, 2018
事実上の勤務作業に等しいのに賃金が発生しないのは問題だと思うんだが。
これって障害者就労特有の大きな闇なんだよね。
就労移行施設と受け入れ先の企業が一体どんな契約を交わしているのか、利用者に公開すべき。
就労移行支援事業所の企業実習は基本的に(というかほぼすべて)無賃で行われます。短期インターンに近い立ち位置です。
実習でも賃金を出すべきかどうか…というのは一言では言えない難しい問題ですね。当事者だからこそ出てくる貴重な意見だと思います。
無賃金だからこそ、実習を受け入れる企業もあることは否めないため、一概に賃金を出さないことが悪いこととも断言はできません。とはいえ、就職前の実習生にとってはお金はとても重要な要素です。
せめて交通費だけでも助成してもらえる制度が出てくればだいぶ違うのでしょうが…
まとめ
- 就労移行支援事業所の通所期間・就職先は実態を把握したうえで、利用前に希望をすり合わせる
- 支援員は他業界出身者が増えてきており、訓練プログラムにも幅がでている
- 利用者にどんな人がいるかはオールラウンド型か障害特化型かで大きく異なる
いかがでしたでしょうか?
近年、就労移行支援事業所は良くも悪くも多様化しておきており、選択肢も幅広くなっています。
その分、利用者側も就労移行支援事業所についての事前知識が求められる世の中になっています。今回の記事を参考に、後悔の無い就労移行支援事業所選びをしてみてくださいね。
20代でなんらかの理由でダメになってしまってまずは職場経験として働くのは良いかもしれないけど結局しっかりお金貰っている人は立派に大学生になって社会人になって生き残るのが日本の人生のレール
お金を貰えない以上はうま味がなく若いならなおさら短期のバイトをしたほうが良い
年を取ると最後は実務経験を見られて判断される