支援機関のことを調べていたら障害者職業センターってところを知ったんだ。どんなところなの?
求職者・在職者を問わずに、就業面での専門的支援を行っている公的機関です。ひとことで言うのが難しいほど、幅広いサービスを行っているんですよ♪
障害者職業センターは各都道府県に設置されている職業的リハビリテーションをおこなう機関です。障害があればだれでも利用できるため、障害者雇用にチャレンジしたい方はぜひ知っておきましょう!
この記事は以下の人におすすめ
- 障害者職業センターがどんな機関かを知りたい方
- 障害者職業センターと他の支援機関の違いを知りたい方
- 障害者職業センターのサービスを知りたい方
今回の記事を見れば、それらの疑問を解決できます。
この記事を見れば知ることができること
- 障害者職業センターの概要と特徴
- 障害者職業センターと他の支援機関との違い
- 障害者職業センターのサービスの詳細
それでは実際に見ていきましょう。
目次
障害者職業センターとは
障害者職業センターとは国が設置した公的な支援機関です。各都道府県に最低1か所ずつ設置されています。北海道、東京都、愛知県、大阪府、福岡県はそれぞれ2か所が設置されています。
地域障害者職業センターでは障害者に対する専門的な職業リハビリテーションサービス、事業主に対する障害者の雇用管理に関する相談・援助、地域の関係機関に対する助言・援助を実施しています。
高齢・障害・求職者雇用支援機構
要は障害者・企業担当者に対しての職業訓練や雇用管理アドバイスなどをおこなう機関です。具体的には以下のような支援を行っています。
<障害者職業センターの支援例>
- これから就職を考えている障害者に対して、数か月間の職業訓練を通して、障害の自己理解をはかってもらう(職業準備訓練)
- 休職状態となった障害者や、休職者を雇用している企業担当者に対し、円滑な復職をするための通所サービスや雇用管理の助言をおこなう(リワーク支援)
- 職場に適応する上で困難な課題を抱えている障害者や企業に対し、ジョブコーチを派遣して職場定着につなげる(ジョブコーチ支援事業)
それぞれのサービスについては後述します。就職前や後を問わずに、幅広くサービスを行っていることだけ把握しておけばOKです!
ちなみに障害者職業センターは、障害者の職業安定を目的とする障害者雇用促進法を法的根拠としてもうけられている機関です。障害者雇用促進法では他にもハローワークや地域の障害者就業・生活支援センターの設置が義務化されており、これらの機関と法的な立ち位置は同じです。
つまり、障害者職業センターは福祉の機関ではなく、公的サービスに位置付けられるということです。
職員配置
地域の障害者職業センターでは、おもに障害者職業カウンセラーとジョブコーチが配置されています。
障害者職業カウンセラーは、職業訓練や企業・関係機関とのコーディネートを中心に活動しています。ジョブコーチは実際に職場介入を行って専門的支援をおこなう職員です。どちらも厚生労働省が定めた研修や試験を修了した支援員です。
対象者
障害(難病含む)をもっており、就職、職場定着などに課題を抱えている方であればだれでも利用できます。
障害者手帳の有無は問いません。なお、福祉サービス受給者証も必要ではありません。
福祉のサービスを提供しているのに、福祉サービス受給者証はいらないの?
それは障害者総合支援法にもとづく福祉サービス(就労移行など)を使う時に必要な証書ですよ。障害者職業センターは障害者雇用促進法で設置されている「公的サービス」なので、必要ではないんです♪
ただし、障害者雇用で応募する場合には障害者手帳が必要となるので、その点は留意しておきましょう!
費用
無料で利用できます。ただし、交通費や昼食は自己負担となります。
障害者職業センターのサービス内容
それでは障害者職業センターの具体的なサービス内容を見ていきましょう。大きく分けて以下の4つがサービス内容となります。
<障害者職業センターのサービス内容>
- 職業評価
- 職業準備支援
- リワーク支援
- ジョブコーチ支援事業
一つずつ紹介していきます。
職業評価
まず最初に紹介するサービスが職業評価です。所定の作業検査キットを使い、作業検査を行います。
作業検査方法
主に以下のフォーマットを用いて、作業検査を行います。事前に過去の経歴や希望職種などを聞いたうえで、どのような作業能力を中心に検査していくかを定めます。
- MWS(幕張ワークサンプル)
PCを使ったOA作業、紙媒体を使って計算や検索作業などをおこなう事務作業、重さ計測などの手先や体を使った実務作業で構成されます。
- MSFAS(幕張ストレス・疲労アセスメントシート)
どのような状況下でストレスを感じるか、仕事への志向性などをはかるための記入式の検査です。
- GATB(厚生労働省編一般職業適性検査)
紙筆検査と器具検査を行います。手先の器用さなどを図る目的で行われます。
検査目的
作業能力をはかることで、自身の現状把握をすることを目的としています。
また、以下の内容に当てはまる方にとっても利用が必要なサービスです。
- 職業準備支援などのサービスを利用したい方
障害者職業センターの職業準備支援などの他サービスを受けるためにも作業検査が必要となります。実際に障害者職業センター側が支援に当たる際に、その方の作業能力を正確に把握しておく必要があります。そのため、利用の前段階の位置づけで実施されることが多いです。
- 職業重度判定を受けたい方
障害者職業センターにて職業上の重度判定を受ける場合、作業検査が必要となります。重度判定は知的障害者が対象となります。重度判定を受けた障害者を雇用すると2人分雇用した扱いとなるため、企業側が重度判定を求めてくる場合があります。
「重度」と聞くとネガティブな印象を受けがちですが、重度判定は障害の重さを示すわけではありません。また、あくまで判定を受けるかどうかは本人の意思に基づくため、重度判定を受けなければ応募に制限がかかるというものでもありません、
職業準備支援
職業準備支援はこれから仕事に就きたいと思っている方を対象とした最大3か月間の通所型プログラムです。
支援プログラム
自身の障害を把握するための自己認知系のプログラムと作業適性をはかる作業系プログラムで構成されます。自身の障害を理解し、今後の就職活動につなげていくことが趣旨です。そのため、専門的スキルの獲得よりも自己理解に重きが置いた構成となっています。
利用の流れ

申込→相談→アセスメント→支援プランの相談→プログラム受講の流れで行われます。申し込み後と相談の間に、職業センターに関しての説明会参加が必要である場合が多いです。
職業準備支援については、以下の記事にて詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
→【実体験】障害者職業センターの職業準備支援を解説 支援者目線で感じたメリット・デメリット
リワーク支援
リワーク支援とは復職に必要なスキル獲得を目的とした通所型のサービスです。職業準備支援とごちゃまぜになりやすいですが、リワーク支援はすでに仕事に就かれていて、休職中の方を対象としています。
支援プログラム
障害者職業センターのリワークプログラムはおおまかに講座、作業課題に分類されます。講座では、ストレス対処やコミュニケーション講座などのセルフケアや対人関係に関するプログラムが行われます。作業課題では、MWS(幕張ワークサンプル)を用いて作業を行います。
障害者本人だけでなく、雇用している企業担当者に対しても、円滑な復職のための雇用管理方法の助言も行われます。
利用の流れ
職業センターのリワークプログラムの流れとしては、説明会参加→関係者面談→体験参加→計画立案→プログラム受講→復職およびフォローアップとなります。利用に際しては、障害者本人、企業、主治医の合意が必要です。
リワーク支援の詳細は、以下の記事を参考にしてみてください。
→障害者職業センターのリワークプログラムの特徴を解説!無料・職場支援・短期集中支援の3大メリット!
ジョブコーチ支援事業
ジョブコーチ支援事業は、障害者が雇用されている企業へジョブコーチの派遣をおこないます。厚労省の職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業によって運用がされています。作業性やコミュニケーション等の面で課題のある障害者への専門的支援をおこなう制度で、おもに職場訪問を通して支援が行われます。
ジョブコーチ支援の特徴
ジョブコーチは週に複数回、企業に介入することでより深く障害者と企業に関わることが可能となります。そのため、ジョブコーチの名の通り、職場でのコーチをおこなうOJTとしての役割を担っています。
障害者による支援が中心ではありますが、職場適応のために社内の上司・同僚や家族などの障害者を取り巻く様々な人たちと連携を取りながら支援に当たっていきます。
利用の流れ

障害者職業センターに申し込みを行います。障害者・企業のどちらからでも申し込みはできますが、導入に当たっては双方の合意が必要です。
状況把握・支援計画の策定が行われた後、ジョブコーチによる支援が行われます。ジョブコーチ支援は集中支援期と移行支援期で支援機関がわかれています。
平均2~4か月のなかで、課題対策をおこなう期間を集中支援期と呼びます。後半の移行支援期では徐々にナチュラルサポート(職場内支援)に移行していき、最終的には障害者と企業で仕事のサイクルが完結できるようにしていきます。
さらにジョブコーチについて知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
→ジョブコーチとは何かをわかりやすく解説!【職場定着のレスキュー隊的存在】
障害者職業センターと他の支援機関の違いは?
障害者職業センターは多種多様なサービスを行っている分、イメージがつきづらい側面があります。
そこで他の支援機関との違いをまとめていきたいと思います。
今はどこの機関も就職前支援と就職後支援を行っている!

こちらの図は主要な支援機関のサービス内容を就職前・就職後で区切ってみたものです。
ひと昔前であればいざしらず、制度が拡充された影響で、令和3年5月時点ではどこの支援機関も求職・定着支援をおこなうようになってきています。
そのため、便利になった一方でどのような違いがあるのか判別しづらくなってきています。
障害者職業センターの強みはスポット的支援
とはいえ、それぞれの支援機関にも特色があります。以下の画像は就職活動から職場定着まで、主要な支援機関をすべて使った場合の流れをあらわしたものです。

おおまかな流れは、就労移行で訓練を行った後、ハローワークで求人検索となります。就職後はおなじく就労移行のフォローアップを受け、障害者就業・生活支援センターに支援をバトンタッチする流れで進められます。
障害者職業センターは、こうしたオーソドックスな支援に介入する存在ではありません。どちらかというと、それぞれの段階で対応がしきれないといったケースにおいて、専門的支援をおこなう存在です。
職業準備支援を通して、かゆいところに手が届く存在であったり、時にはジョブコーチ派遣を行い、レスキュー隊的な立場で関わることがあります。こうしたスポット的な介入をおこなう点が、障害者職業センターと他の支援機関でおおきく異なる点と言えるでしょう。
時と場合に応じて使うかどうか決めることが大事なんだね。
その通り!よくわからないから使わないというのはもったいないです。いざという時の選択肢として知っておくのが大事です♪
障害者職業センターと障害者就業・生活支援センターとの違い
そういえば障害者職業・生活支援センターって言葉が出てきたけど、障害者職業センターとは別物なの?
これは現役支援員の立場からはっきり申し上げます、まったく別物です笑
障害者職業センターと障害者就業・生活支援センター…ひびきが同じような名前なので混同しやすいですよね。
まず障害者職業センターは公的機関に当たりますが、障害者職業・生活支援センターは民間の社会福祉法人などが国や県から委託を受けて運営をしている点で性格が異なります。
障害者職業・生活支援センターは、適職相談を通した就職サポートから定着支援まで、就業支援をワンストップでおこなう機関です。先ほど述べた通り、障害者職業センターはジョブコーチ派遣などスポット的な支援のため、立ち位置が微妙に異なります。
ただ、自分が利用者の立場だったら、かなり紛らわしいと思います笑
障害者職業・生活支援センターはあいだに中点があることから転じて、「ナカポツ」とも呼ばれています。紛らわしさを感じる人はナカポツという名前で覚えていただけると嬉しいです。
ナカポツに関しては、以下の記事を参考にしてみてください。
→障害者就業・生活支援センターとは障害者雇用の何でも屋!働くを楽にするためのサービス内容を総まとめ!
まとめ
- 障害者職業センターは国が設置した障害者の就労支援をおこなう専門機関
- 職業相談、職業準備支援、リワーク支援、ジョブコーチ支援事業を行っている
- 他の支援機関と異なり、専門性の高い支援をスポット的におこなう点が特徴
いかがでしたでしょうか?
今回は障害者職業センターのまとめ記事として作成してみました。ぜひ他の記事も参考にしていただけると、理解が深まるかと思います!それではまた次回の記事でお会いしましょう!


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