社会資源を知る

【実体験】障害者職業センターの職業準備支援を解説 支援者目線で感じたメリット・デメリット

スポンサーリンク

障害者雇用について調べていたら、職業準備支援って言葉をネットで見たよ。どんなサービスなの?ほかの支援サービスとどう違うの?

職業準備支援は地域の障害者職業センターが行っている就業支援を指します。一定期間通所して、就業生活に必要な知識や働きかたを見つけていくことを目的にしてますよ。

みなさんは職業準備支援という言葉は聞いたことがありますか?障害者職業センターが実施している通所型支援です。これから就活したいけれど、すぐに動き出すには不安があるという方にはうってつけのサービスです。

ネットだと「使っても意味が無い」など、ネガティブなイメージも散見されます。職業準備支援の役割を理解していないと、期待とのギャップから、こうした感想が生まれてしまいます。

今回の記事では、職業準備支援を障害者にコーディネートした経験のある筆者が、支援員目線で職業準備支援のメリット・デメリットを紹介していきます。最後までぜひご覧ください!

この記事は以下の人におすすめ

  • 職業準備支援とはどんなサービスかを知りたい方
  • 職業準備支援の実態を知りたい方
  • 職業準備支援の利用に興味を抱いている方

今回の記事を見れば、それらの疑問を解決できます。

この記事を見れば知ることができること

  • 職業準備支援の概要・他の支援との違い
  • 職業準備支援のメリット・デメリット
  • 職業準備支援を使う上での心構え

それでは実際に見ていきましょう。

職業準備支援とは

職業準備支援とは、障害者職業センターが提供している支援プログラムです。正式な実施主体は、運営母体である高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)となります。この辺はさわり程度に覚えておけばOKです。

職業準備支援の支援は以下のように規定されています。

 就職又は職場適応に必要な職業上の課題の把握とその改善を図るための支援、職業に関する知識の習得のための支援、社会生活技能等の向上を図るための支援を行います。
 終了後はハローワークによる職業紹介、ジョブコーチによる支援等につなげていきます。

高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)

ひとことで言えばどんなことをしてくれるの?

働くために必要な自己理解や課題把握をサポートしてくれると覚えておけばOKです。

障害者職業センターが実施しているサービスの一つ

職業準備支援は障害者職業センターが行っている数々のサービスの一つにすぎません。ほかにも以下のようなサービスがあります。

  • 職業相談・職業評価

障害者の適職の相談や作業適性を図るための検査を実施。

  • 職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援

職場定着を希望する障害者や企業の求めに応じて、ジョブコーチを派遣する制度。職場訪問を行うため、障害者本人はもちろん職場への了解が必要。

  • リワーク支援

うつ病などの休職者に対し、復職を目的とした通所プログラムを実施。障害者、企業、主治医の利用同意が必要。

はえー、プログラムっていっても色々あるんだな…

細かな内容まで覚える必要はないですよ。就職後の定着で不安があればジョブコーチ、もし休職することになったらリワークを使えると知っておきましょう。

特にリワークと職業準備支援は同じ通所プログラムなのでややこしいです。リワークは、すでに仕事に就いている方が対象です。対して、職業準備支援はこれから仕事に就きたいと考えている方を対象としたサービスです。

ジョブコーチは障害者が職場定着をはかるために、集中的に職場介入をしてくれるサービスです。職場でうまく適応できるか不安があるという方は利用を検討してみましょう。

リワーク、ジョブコーチについては以下の記事を参考にしてみてください。

障害者職業センターのリワークプログラムの特徴を解説!無料・職場支援・短期集中支援の3大メリット!

ジョブコーチとは何かをわかりやすく解説!【職場定着のレスキュー隊的存在】

利用対象者

職業準備支援の利用には診断名、障害名、障害者手帳の有無を問いません。障害を持ってさえいれば、誰でも申し込むことができます!

費用

利用費は無料(交通費・昼食費除く)です。国の事業として運営しているため、費用が掛からない点はありがたいですね。

利用期間・利用時間

利用期間は以下の通りです。

 【利用期間】1週間~12週間
       通所日数については、ご希望を伺った上で週2日~5日で決めます。
       講習・講座のみの利用も可能です。
 【利用時間】9:15~15:30(休憩12:00~13:00) 

参考:鹿児島障害者就業支援センター

期間や時間は各障害者職業センターによって異なる場合がありますので、利用ご検討の方は要確認です。

障害者の方々の状態や希望に応じて、利用期間は前後します。最大でも3か月までの利用のところがほとんどですね。

もし利用期間中に実習や就職が決まったらどうするの?

その場合は支援を中断・終了できますよ。実習が終了したらプログラムを再開できます。

利用までの流れ

支援の流れは以下の通りです。

申込→相談→アセスメント→支援プランの相談→プログラム受講の流れで行われます。申し込み後と相談の間に、職業センターに関しての説明会参加が必要である場合が多いです。

支援プランはアセスメントの評価や希望職種によって異なります。支援期間中は担当のカウンセラーがついてプログラム受講を行います。もし私のような就労支援機関が別についている場合は、支援期間中に振り返りの面談を関係者一同で行う場合があります。

注意!

令和3年4月現在、新型コロナウイルスの影響で、説明会の頻度や定員に制限を設けているセンターが多いです(特に都市部)。そのため、職業準備支援の受講が順番待ちになっているケースが散見されます。利用をお考えの方は、最寄りのセンターに、利用までにどの程度待つのかを確認しておきましょう!!

支援プログラム

支援プログラムの一例を紹介します。

支援プログラムは自己認知系のプログラムと実務系プログラムで別れています。

自己認知系のプログラムではストレスを感じた時にどのように対処するか、意志発信をどのように行うかなど、体調やコミュニケーションへの理解を深めるプログラムが行われます。JEEDが作成したMSFAS(ストレス・チェックシート)を用いて、個人ワーク形式で考えを深めたり、受講生同士で自分の意見を伝えるグループワーク形式で行うものもあります。

参照: 高齢・障害・求職者雇用支援機構

実務系のプログラムはデータ入力やピッキングなど、希望する職種に応じた作業を行います。JEEDが職業評価の際に取り入れている、MWS(幕張ワークサンプル)というキットを用いることが多いです。

作業を通して、集中力の持続性や正確性・スピードなどを確認していきます。また複数回の受講を通して、どの程度向上しているか、自身で工夫がはかれているかなど、多角的な側面から作業姿勢を確認します。

重要なポイントとして、すべてのプログラムは障害上の配慮点を理解・発信できるようになるために行われるということです。つまり、スキルアップではなく理解に重きが置かれているということですね。

3か月の支援期間中に自分や企業が望むであろう能力をすべて獲得することは難しいのが実情です。しかし、どうすれば働けるかを言語化できるようにもっていけば、配慮を得たうえで就職できる可能性を上げることができます。

実際に職業準備支援では最終的な到達点として、配慮点をまとめたナビゲーションブックの作成を行います。数々のプログラムを経験した障害者本人が作成するため、完成度が高く、まとまっていると感じることが多いです。

高齢・障害・求職者雇用支援機構

ナビゲーションブックは就活の面接時に提出することもあります。企業側としても受け入れる際にとても有用な参考資料になります

注意!

令和3年4月現在、新型コロナウイルスの影響で、集団プログラムは控えているというセンターが見られます。具体的にどのプログラムが制限されているかは最寄りのセンターに確認しておきましょう!

職業準備支援のメリット

それでは、職業準備支援を受けるメリットを見ていきたいと思います。支援者からの目線で感じたことなので、参考にしてみてください。

自己理解を深められる

職業準備支援を受ける第一のメリットは自己理解を深められることです。

先ほど述べた通り、職業準備支援は自己認知系プログラムが充実しており、自分のコミュニケーションや体調などを振り返る機会が多いです。

なんとなく得意、なんとなくわかっているというあやふやな状態を、明確にしていくことで自己理解が進みます。自己理解が深まるということは、障害者雇用で働く時の合理的配慮を整理しやすくなるということです。

合理的配慮は障害者雇用で就職する際に避けては通れないポイントです。職業準備支援でしっかり過去の振り返りを行うことで、働いた後の安定にもつながりやすい点はメリットと言えるでしょう。

合理的配慮のまとめ方は以下の記事をどうぞ。職業準備支援を使う使わない問わずに参考になるかと思います。

障害者雇用で合理的配慮を得る方法教えます【知らないと危ないです】

長期間通所せずに自信がつめる

次に職業準備支援を使うメリットは、長期間通わなくても自信をつむことができることです。

思ったんだけど、通所するだけなら就労移行支援事業所の方が良くない?就労移行支援事業所の方がプログラム充実しているところあるし。

良い質問ですね!通所するという点だけ見ると就労移行支援事業所の方がメリットがありそうですよね。

確かに同じ通所サービスであれば就労移行支援事業所もあります。しかし、全員が全員、就労移行支援事業所に通って就活をしたい方ばかりではないんです。

実際に私がかかわった例を見てみましょう。

  • 就労移行支援事業所に行くと長い期間通わなくちゃいけない。そこまでは待てないから、職業準備支援で自分に必要なことをピンポイントで知って、早期に就活したい。
  • 以前に通っていた事業所で利用者同士のトラブルがあり、障害者がたくさんいる環境には通いたくない。職業準備支援はそこまで少数の障害者しかいないから利用したい。
  • 職歴にブランクがあるのでどこかに通って自信を積みたい。スキルには困っていないので、短期間で通所できるところを探している。

就労移行支援事業所は職場実習のコーディネートを行う機能があるため、一定期間以上(平均8,9か月程度)は通う必要があります。そこまでは金銭的理由などで待てない。かといって、いきなり就活に踏み出す自信が無いといった中間層の方にとって、職業準備支援はニーズがある制度です。

長期間通わなくても、プログラムを通して通所できたという自信をつむことができるのはメリットですね。逆に言えば、長期間通うことに抵抗感はない、スキルを高めていきたいという希望のある方は就労移行支援事業所の利用をおすすめします。

参考:【2021年版】本当におすすめの就労移行支援事業所3選【現役支援員が解説】

ジョブコーチを利用できる

最後に紹介するメリットはジョブコーチを利用できる点ですね。

厳密にはジョブコーチは職業準備支援を受けていなくても利用はできます。しかし、職業準備支援を通してジョブコーチを利用すれば、今までの経緯や配慮点はすでに知ってもらっているので、より質の高い支援を受けやすくなります。

もちろんジョブコーチ自身のスキルによっても支援の質は異なります。とはいえ、自分自身をすでに知ってもらっているので、どのジョブコーチを選定するかの段階から好影響があります。

自分自身を相手に知ってもらっているのは安心だな~

ジョブコーチの派遣元が障害者職業センターだからこそのメリットですよね♪

スポンサーリンク

職業準備支援のデメリット


良いことづくしに見える職業準備支援にもデメリットはあります。

スキルを身につけられるかは別問題

ここまで読まれた方はわかると思いますが、職業準備支援はスキルを高めるために行く事業所としては不十分です。

とにかく大事なことなので何度もお伝えしますが、職業準備支援はスキルアップではなく自己理解に重きを置いているサービスです。

就活に有利に働くスキルを3か月程度で習得することがハードですしね。デメリットというより、勘違いししやすい要素とも言い換えられるでしょうか。

なので、職業準備支援で実際の仕事に役立つ技能を教えてもらえなかった!と言うのは、肉屋に行って野菜が無いと文句を言うようなもん(?)です。そもそも役割が違うということですね。

ただ、そういった立ち位置であることを職業センター側もわかりやすくIRすべきだとは思います。私が見てもぱっと見ではわかりません。この辺は官公庁に近い組織なので、あまり断定した物言いは避けていることが考えられます。

支援を受けられるまでに結構待つ

次のデメリットは職業準備支援を受けるまでに数か月要すということです。職業準備支援は説明会参加や職業評価を行った方から順に案内をしているため、順番待ちの状態になりやすいです。

しかも令和3年4月時点では新型コロナウイルスの影響をモロに受けているため、参加者をしぼりながら案内しています。ともあれ、説明会や面談をすっ飛ばしてプログラム受講はできないので、こればかりは待つしかありません。

どれくらいは待つかはその時の状況によります。令和2年の秋ごろに確認した時は、申し込みから受講までに2,3か月程度は要するとコメントをもらいました。ご参考までに。

全員が受けられるわけではない

次のデメリットは希望した人全員が職業準備支援を受けられるわけではないということです。

おいおい!ここまで言っといて全員受けられないってうそでしょ!?
さっきは障害者であれば全員受けられるって言ってなかった?

事実として職業準備支援を希望しているけれど断られてしまったというケースが実在します…

私が支援していた知的障害の方は、職業評価の結果、課題とされる作業性などが支援期間内で改善できるかが判断できないとされ、職業準備支援には移れませんでした。一応補足しておくと、評価によっては受けられない場合もありうることは事前に説明を受けていました。

その方はもともと、3か月の期間を過ぎたらすぐに就職したいという気持ちが強い方でした。そのため、就職を確約できる制度ではないので、訓練を受けても希望には添えない可能性が高いとつけ添えられたうえで、落選した経緯があります。

このように、本人の希望に沿う効果が保証できないという場合においては、職業準備支援に移れないケースもあります。

このあたりの解釈は賛否両論あるかと思います。できるできないを初めの段階で伝えるのは大事なことだと考えます。ただ、仮にすぐに就職できなかったとしても、本人の学びにはつながったのではないかという個人的な想いがあります。

ホームページには「企業就労を目指す方はどなたでも利用できます」という文言があるのに、実際は「準備支援を受けるための準備」が必要という、なんだか矛盾した前提があります。

あまり語りすぎると脱線しそうなので、このあたりに留めますが、もう少し見せ方・伝え方を工夫してほしいな…と感じる今日この頃です。

受けることではじめて自分の至らない点がわかる部分もあると思うんですよね…

とにかく、就業できる状態かどうかは職業評価時にチェックされること、場合によってはお断りされうることは知っておきましょう!

まとめ

  • 職業準備支援は障害者職業センターが実施する最大3か月間の通所プログラム
  • スキルアップではなく、自己理解に重きを置くプログラム
  • 長期間通わなくても自己理解が深められ、ジョブコーチを利用しやすい点がメリット
  • プログラム受講まで時間がかかる上、全員が受けられるわけではない点がデメリット

いかがでしたでしょうか?

就労移行支援事業所とは違ったアプローチで受けることができる制度であることがわかったかと思います。コロナウイルスの影響も大きい事業ですが、興味がある方は利用を検討してみてくださいね。では次の記事でまたお会いしましょう!

スポンサーリンク

検索

人気の記事