障害者トライアル雇用制度で就職が決まりました!普通の雇用と何が違うの?クビになることってあるの?
おめでとう!トライアル雇用は3か月という期間を通して、本採用とするかを見極める有期雇用契約です。本採用に至らない(クビ)になることもあるけれど、対処法はありますよ!
障害者雇用で就職を希望する方は求人票に「トライアル雇用」という文言を見かけたことは有りませんか?
トライアル雇用は説明を受けてもいまいちイメージがつかみずらい制度です。そこで今回の記事では、トライアル雇用制度の概要やメリットを取り上げていきます。トライアル雇用でクビにならない対処法や万が一クビになった場合の心構えも解説していきますので最後までご覧ください。
この記事は以下の人におすすめ
- トライアル雇用とは何かを知りたい障害者、企業担当者
- トライアル雇用を通して本採用を目指している方
- トライアル雇用で本採用に至らず落ち込んでいる方
今回の記事を見れば、それらの疑問を解決できます。
この記事を見れば知ることができること
- トライアル雇用の概要、メリット
- トライアル雇用でクビにならないための対処法
- トライアル雇用でクビを言い渡された場合の心構え
それでは実際に見ていきましょう。
目次
トライアル雇用とは
トライアル雇用はひとことで言えば、3か月間の有期雇用契約を結び、働きぶりを見て本採用に移るかを判断する制度です。
トライアル雇用と試用期間の違い

トライアル雇用と通常の試用期間の違いは長期雇用を前提としているか否かの違いでしょう。
通常の雇用における試用期間は長期雇用を前提とした契約です。そのため、労働者のレベルに問わず、あくまで「仕事に慣れるための期間」という位置づけで働くこととなります。
一方、トライアル雇用は、障害者側、企業側が長期で働けるかどうか不安がある場合に適した制度です。採用段階では3か月間の有期雇用契約を結んでから正式に採用となるか判断を行います。そのため、「おたがいを見定めるための期間」という位置づけで働くことができます。
企業側のメリット・デメリット
企業側のメリット・デメリットとしては以下の点が挙げられます。
企業側のメリット
- 採用コストを抑えられる
通常雇用とは異なり、トライアル雇用を利用するとトライアル雇用助成金を受けることができます。
受給額は対象者1人につき月額最大4万円(最長3か月)が受けられます。短時間トライアル雇用(週労働時間10時間以上~20時間未満)の場合は月額最大2万円(最長12か月)を受給できます。
そのため、採用や人件費を抑えつつ雇用することができます。
トライアル雇用助成金制度については、以下の記事にて詳しく紹介しています。
→【企業向け】トライアル雇用助成金はいくらもらえるかが3分でわかります【申請方法・コロナ特例も解説】
- 雇用してから判断することができる
トライアル雇用はトライアル期間終了後、障害者のレベルに問わず、いったん契約解除となる制度です。そのため、もし本契約に移行しない場合は契約満了扱いとなり、企業側の解雇実績には含まれません。
「良さそうな人材だけど採用には微妙なレベル…」といった応募者に対して、いったん雇用してから判断するといった選択肢が生まれます。
ただし、本契約に移らない場合は客観的かつ合理的な理由が求められますので注意が必要です。
- 障害者雇用のノウハウを高められる
はじめて障害者雇用する企業は、自社が障害者に受け入れてもらえるのか不安なものです。トライアル雇用を利用すれば、障害者側に配慮が整った環境かどうかを見極めてもらうことができます。
仮に本契約に移れなかった場合であっても、障害者雇用を行った経験は企業にとって決して無駄にはなりません。次回の雇用に向けてのノウハウとして積み上げることができます。
企業側のデメリット
- 職場環境を整える必要がある
トライアル雇用であっても障害者雇用に変わりはありません。雇用を行う以上、配慮を整える工夫(バリアフリー、就業条件の配慮など)を行う必要があります。また、障害者の育成・相談窓口となる担当者を確保しておく労力が伴います。
- 手続きが煩雑である
トライアル雇用はハローワークへの各種手続きの元で申請できる制度です。
トライアル雇用開始後に実施計画書を提出するだけでなく、期間終了時には結果報告書を提出する必要があります。また、労働者を本契約にした場合はトライアル雇用奨励金の申請書が必要となります。
このように、トライアル雇用は各種申請書の手続きで煩雑になりがちです。人事担当との密なやり取りが重要です。
障害者のメリット・デメリット
続いて障害者にとってのメリット・デメリットを見ていきましょう。
障害者のメリット
- 興味のある業種にチャレンジしやすい
先にも述べた通り、トライアル雇用は企業側が採用に踏み出しやすい制度です。ということは、障害者側にとっては、採用のハードルが下がることにつながります。未経験の業種であっても、意欲さえあれば雇ってもらえるチャンスになります。
積極的にチャレンジしやすい点では大きなメリットでしょう。
- ミスマッチングを防げる
せっかく入った会社であっても、実際の仕事のイメージなどが異なることはありえるケースです。もし配慮を受けても働くことは難しいと判断した場合、トライアル雇用期間で雇用を終了することができます。
将来的なミスマッチングを未然に防ぐことができるのはトライアル雇用のメリットと言えます。
- 就業経験をつめる
就業の経験が少ない人にとってはトライアル雇用制度で就業経験をつめるのは大きなメリットです。仮に本契約に移行できない場合であっても、実際に働いた経験を得ることができます。
働いて得られた情報を元に、次回以降の就職活動にどのような活かしていけばよいかを判断することができます。
障害者のデメリット
- 雇止め(契約満了)として履歴に残る
トライアル雇用で本契約に移行できない場合はそのまま退職することとなります。3か月であっても、その会社で働いた履歴となります。就職活動の際に、契約満了となった理由を掘り下げられるリスクがあることは承知しておきましょう。
- 全ての障害者が利用できるわけではない
トライアル雇用の紹介は要件が定まっています。具体的には以下の要件に当てはまっている方のみが応募できます。チェックしておきましょう。
① 紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
厚生労働省
② 紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている※1
③ 妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業※2に就いていない
期間が1年を超えている
④ 55歳未満で、ハローワーク等において担当者制による個別支援を受けている
⑤ 就職の援助を行うに当たって、特別な配慮を要する※3
※1 パート・アルバイトなどを含め、一切の就労をしていないこと
※2 期間の定めのない労働契約を締結し、1週間の所定労働時間が通常の労働者の所定労働時間と同等で
あること
※3 生活保護受給者、母子家庭の母等、父子家庭の父、日雇労働者、季節労働者、
中国残留邦人等永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者、生活困窮者
トライアル雇用でなぜクビになるのか
トライアル雇用は使いようによっては、おたがいにとって良い制度と言えますが、実は一つ大きな問題点があります。
なんで?本契約に移れれば普通の雇用と問題ないんでしょ?
その「本契約に移れれば」という点がクセものなんです。
トライアル雇用の問題点は、本契約に移るかどうかの判断は企業に一任されている点です。
障害者側は生活がかかっているため、よっぽどのデメリットがなければ本契約を望む方は多いです。対して、企業側は客観的な理由があればトライアル雇用期間での雇止めをしても不当解雇には当たりません。気軽に採用しやすい反面、雇止めのハードルも低いということです。
そのため、トライアル雇用はどうしても企業優位になりがちです。事実、厚生労働省のトライアル雇用リーフレットによると、2割の方が本契約に移れずに終了しているというデータがあります。
リスクにも留意してチャレンジするかどうかを決めていきましょう。
トライアル雇用でクビにならないための対処法
それでは、トライアル雇用でクビにならないためにはどのようにしたら良いのでしょうか?
月1回は振り返りの面談をもうけてもらう
トライアル雇用では、少なくとも月1回は企業担当者と振り返りの面談をもうけてもらいましょう。
理由は一つ。企業の評価を知っておかないと、クビになりうる要因をつぶすことができないためです。実際の業務が始まると、なかなか企業側は障害者側に評価を伝える機会を逸してしまいがちです。
もし企業担当者だけが課題を胸の内にため込まれていた場合、改善することができないままトライアル期間が過ぎてしまいます。
そのため、課題を知って改善する方法を相談する場として振り返り面談をもうけてもらうことはトライアル雇用においてマストです!
支援機関を活用する

トライアル雇用をお考えの方はぜひ支援機関を活用することをおすすめします。
障害者雇用に不慣れな企業の場合、障害者に気を遣いすぎた結果、図のような課題の発見の遅れを招くおそれがあります。
支援機関が間に入ると、自分の口からは伝えづらい配慮点を企業に伝えてもらうことができます。また、第三者が間に入ることで率直な企業評価を引き出しやすくなり、課題が発見しやすくなります。
支援機関については、以下の記事を参考にしてみてください。
→【2021年版】障害者雇用就職で後悔しないための就労移行支援事業所オススメ3選【現役支援員が解説】
また、障害理解のある企業に就職するには、企業選びの段階から転職エージェントを活用するのもオススメです。以下の記事で転職エージェントを特集していますので、参考にしてみてください。
→障害者雇用でホワイト企業に就職したい方にオススメする転職エージェント3選
ジョブコーチ制度を活用する
トライアル雇用でクビにならないための対処法としては、ジョブコーチの利用も選択肢の一つです。ジョブコーチとは、障害者が職場に適応するために仕事の援助を行う支援者をさします。
普通の支援者と何が違うの?
ジョブコーチは通常の支援と異なり、週2,3日などこまめに支援に入ってもらえる点に違いがあります。
ジョブコーチは職場適応を行うために、就業スキル・職場環境の調整を行います。手順書の作成など、通常の訪問支援よりも手厚い支援を受けることができます。自分の能力に不安があるという方は利用を検討してみましょう。
利用するには地域の障害者職業センターに申し込みをする必要があります。また、職場側への了解も必要になるため、選考段階で確認をしておきましょう。
ジョブコーチについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
→ジョブコーチとは何かをわかりやすく解説!【職場定着のレスキュー隊的存在】
トライアル雇用でクビになった時の心構え
もし色々な手立てをつくしてもクビになってしまったら、どのように捉えていけば良いのでしょうか。
働き続けていてもかえって辛かったかもしれない
もし本契約に移れなかった場合、どのような感情を抱くでしょうか?
怒り?悲しみ?くやしさ?
どれもその人の正直な気持ちだと思います。まずはその気持ちとじっくり向き合ってもらいたいと思います。
そしてその後には、このように考えてほしいのです。
本当にあの会社で働き続けて幸せだったのだろうか?
色々な配慮事項や、人によっては外部機関まで使っても本契約に至らなかった。残念だと思いますが、そんな会社で無理して働くことがあなたにとっての幸せだったのでしょうか?
忘れないでほしいのは、本契約に至らなかったからと言って、あなたの人としての価値が無いわけでは決してありません。あくまでその会社の業務にはマッチングしなかっただけです。
実業務を通して適性を知ることができた
本契約に至らなかったとしても、職種に対しての向き不向きを知ることができたと捉えてみましょう。3か月で可能性のすべてを知ることは難しいですが、実業務を通して感じたことは何よりの財産です。
本契約に至らなかったとしても、より適性の有る職種を絞り込める確率は上げることはできます。
魅力的な仕事に巡り合えるチャンスを増やすことができたと捉え、悲観的になりすぎないようにしましょう。
就業の実績をつくることができた
特に就業経験の少ない方に伝えたいこととして、たとえ3か月の就業実績でも伝え方によっては大きなアピール材料になるということです。
みなさんが採用担当だったらお二人のうち、どちらを採用したいでしょうか?
<Aさん>
「3か月で雇止めにはなったけれど、スピード感のある仕事に苦手意識があるとわかる良いきっかけになりました。正確性は高いと評価を受けたことで自分の強みも知ることができました。自分の強みを活かしたいと思い、御社の業務にチャレンジしようと考えました。
<Bさん>
「君は雇えないと言われてしまい、途方に暮れてしまいました。なんとか自分にできる仕事は無いかを探した結果、御社の求人を見つけ、応募しようと考えました。」
あえてわかりやすくしてみました笑
ほとんどの方はAさんを採用したいと思うかと思います。AさんとBさんの大きな違いは、雇止めになったことをプラス材料と捉えているかどうかです。
将来の気づきになったことをアピールしていけば面接時にも問題はありません。具体的にどこが気づきになったか、次に受ける会社の志望理由にどのようにリンクしているかを伝えられればよりGOODです!!
3か月での雇止めという結果に引っ張られないようにしましょう!
まとめ
- トライアル雇用は3か月の見極め期間を経て、本契約に移るかどうかを判断していく制度
- 採用のハードルが下がるメリットはあるが、3か月で雇止め(クビ)になる可能性もある
- 振り返り面談、支援機関などの活用を通して、クビになるリスクを下げることができる
- クビになっても、気づきを得るきっかけになったとプラスに捉えるようにしよう
いかがでしたでしょうか?
トライアル雇用は良い面もありますが、クビになる人も存在します。しかし、適した対処法や雇止めになった時の心構えを知っておけば、後悔のないチャレンジにすることが可能です。今回の記事を参考に、良い就職活動を送ってくださいね!


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